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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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『ラスト・コヨーテ』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

マイクル・コナリーの『ラスト・コヨーテ』を読みました。5月にいつも頼りにしている「探偵小説三昧」さんのブログで『転落の街』という作品を知り、興味を持ったのが最初で、1作目から読み始めて本作が4作目。『転落の街』を含めて5作目の本になります。

こんなお話
気性が激しく一匹狼の主人公ハリー・ボッシュはハリウッド署殺人課に席をおく刑事だが、今回も上司である警部補とトラブルをおこし休職の扱いを受けている。しかもその間にカウンセリングを受けて精神分析医の評価が出なければ復職はかなわない状態。ところがその精神科医とも棘のある応答をしてしまう。
そんなハリー・ボッシュであったが、自分の中に閉じ込めておいたやらなければならないことに取り組む決意をする。それは母親の死の真相を知ることだった。ボッシュの母親は街娼をしていてボッシュが11歳の時に殺されていたのだ。しかもいい加減な捜査により未解決事件となっている。警察官になってからも母親の死の真相に向き合うことを避けていたボッシュだが今こそ母親の事件と向き合うことが必要と調査を始めるのだったが、その結果新たな殺人を生むことに。

これまでの作品でもベトナム戦争、父親との家族関係、というボッシュの人間性を形成する重要な点と事件とを関連させてきたが今回はとうとうボッシュの母親の死の真相という大きな事件をそれも正面に据えている。4作目にしてもうなのという感じだが読者としてはこのテーマをあまり引っ張って欲しいとも思っていないので順当なところかと思う。
さて少し残念だったのは前作で恋人になっていたシルヴィアが“ボッシュを分かってしまった”という理由で去って行ったことだ。前回私は大人の恋愛としての展開に興味を持つと書いたが、なんだかさっさと裏切られてしまったようで面白くない。ジャスミンという新しい恋人が登場し彼女もまた心に傷を負った女性だ。ボッシュが傷を抱えているように恋人となる女性も過去に縛られ傷を持ちながら魅かれあう。このパターンで今後も行くのなら辛いし別れと新しい恋人の繰り返しになるのではないかと心配する。

事件はカウンセリングを受けている女性の精神分析医の働きで思わぬ方向が示され真相の解明につながる。一見ありきたりに見える真相ではあるのだが、よく考えてみると男の側でみられてきた事件が女の面も絡み合って厚みが増した真相となっている。

さて、1作目から物語はボッシュの生い立ちやベトナム戦争、ハリウッド署に配転になった殺人事件とボッシュの過去を一つ一つ解いていく作品だった。母親の死の真相を解明した今、次の5作目はどうなるのだろう。新しい恋人ジャスミンとの関係や精神分析医の女性との関わりはどう展開するのだろ。興味は続く。
次の6作目は『トランク・ミュージック』というタイトル。また図書館に借りに行こう。


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テーマ : 推理小説
ジャンル : 小説・文学

『ブラック・ハート』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

一雨ごとに秋が深まってゆく・・・そんな季節の記憶は何処へ行ったのか。今朝は激しい雨に目が覚めるほどだったのだが、お昼には青空に刺すような太陽。もちろん気温も三十度近くあって汗ばむくらい。秋の味覚さんまが獲れないのは何処かの国の節操のない漁のせいとテレビのニュースでは伝えているが、素人にはそれだけではないように思える。日本海の冬の味覚、松葉蟹や寒ブリ、このわたやくちこが食べられなくなったら冬の楽しみはどうしたらよいのかしらと今から悲しくなってしまう。

マイクル・コナリーの『ブラック・ハート』を読みました。『ナイトホークス』から順番に読んで三冊目です。

こんなお話。
ハリウッド署殺人課の刑事、ハリー・ボッシュはブロンド女性が11人も惨殺された“ドールメイカー事件”で犯人を撃ち殺していたが、事件から4年後、犯人の妻から訴えられ裁判に臨んでいる。そんな折真犯人と名乗る男からメモが送られ、コンクリート詰めされた女性の死体が発見される。殺害の手口や女性の特徴、メモの内容から“ドールメイカー事件”の犯人の特徴と一致するのだが、はたしてハリーは犯人を間違って殺していたのだろうか。裁判を抱えながらハリーは真実を探る捜査を開始する。

上巻はリーガル・サスペンスの様相の作品で私はこうゆうタイプの作品を本で読むのは初めて。原告側弁護士、被告側ハリーの弁護士、そして判事とのやり取りなど立場の違いや人物の特徴の出し方などが面白い。
一方ハリーは裁判を気にしながらも新たに浮かび上がった新犯人を名乗る男の事件の真相を明らかにすることに集中しようとする。ドールメイカー事件で射殺したノーマン・チャーチが真犯人であることに疑いを持っていないボッシュとロス市警だが、なぜ新たな犯人は細部まで詳しく知っているのか。心理学者のジョン・ロックやハリウッド署風紀課刑事レイ・モーラと作者は怪しい人間を登場させて読者を飽きさせない。

本作で私が関心を持ったのは本筋ばかりではなくボッシュの恋人シルヴィア・ムーアとの関係の描き方だ。前作で魅かれた二人は恋人としての関係を築こうとしているがお互いに辛い過去をもっているため簡単にはいかない。ボッシュの全てを知りたいと思うシルヴィアだが、ボッシュは自分の過去と心情を開くことをしない。それほどに重たくキツイ経験をボッシュは背負っているということなのだが、シルヴィアは知ることが二人には必要だと思っている。しかしそのシルヴィアも刑事であるボッシュの生き方が難しいものであることは理解していて受け止めることが困難だと分かっていて関係を進めることが出来ないでいる。
痛々しい恋愛関係だが、大人の恋愛には当然起こり得ることで、二人がそれにどう対処するのか興味の湧くところだ。

真犯人へ迫るところは少し薄い感じもしたし、別な謎も残るラストだが、堪能できた一冊だった。

ハリー・ボッシュシリーズは第一作の『ナイトホークス』でベトナム戦争を、二作の『ブラック・アイス』では親子関係を事件と絡めながらボッシュ刑事の抱えているものを読者に明らかにしてきた。今回はボッシュがロス市警からハリウッド署に左遷されるきっかけとなった“ドールメイカー事件”がテーマだった訳だが、次回作品『ラストコヨーテ』は何をテーマにしているのか、今から楽しみだ。

ではまた。

『ブラック・アイス』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

不安定な天気、豪雨被害、熱中症が心配されるほどの酷暑・・・南極の棚氷が割れて海に浮かぶ状態に・・・と毎日様々な気象報道がされています。皆様はいかがお過ごしでしょうか。
昨夜は久しぶりにプールで泳ぎ開放感に浸りましたが、適度な運動による体力維持と食事管理ぐらいしか私は自分を守ることが出来ません。


マイクル・コナリーの『ブラック・アイス』を読みました。デビュー作『ナイトホークス』に続く二作目です。

こんなお話し。
麻薬課の刑事ムーアがモーテルで死体となって発見される。ボッシュは現場に行くも、内務監査課がでてきて捜査から外されてしまう。ムーアには汚職の可能性が出てきたというのだ。検死の結果に疑問を持ったボッシュは単独捜査を続けメキシコの麻薬王ソリージョにたどり着くのだが・・・。

前作『ナイトホークス』では主人公ボッシュがベトナム戦争を経験している事が重要な鍵としてあり、物語もベトナム戦争を背景にした犯罪でした。今回はボッシュの出生の秘密が明らかにされ、同時にムーアの事件を追ううちに明らかになるメキシコの麻薬組織の姿。なかなか考えられた構成でそう作るのかと思わせる作品です。
本筋の構成も良いのですが、ボッシュの周りの女性たちとの関係、メキシコとの警察との距離間、闘牛シーンの熱狂などいくつものシーンが筋肉質な感じで作品を包んでいます。

さて、次は三作目『ブラックハート』。ゆっくり読むこととしましょう。

『ナイトホークス』 マイケル・コナリー

お元気ですか?

先日『転落の街』を読み興味を惹かれたのでマイケル・コナリーの作品を最初から読んでみたいと思い取り寄せたのが『ナイトホークス』。このタイトルは日本語版のもので、原題はTHE BLACK ECHO と言う。1992年の作品だ。原題のもつ意味については置いておくとして日本語版のナイトホークスというタイトルは秀逸だ。そのタイトルの話題に入るまえに、こんなお話し。

かつてロサンジェルス市警本部の強盗殺人課にいたヒエロニムス・ボッシュ通称ハリー・ボッシュはある事件を理由にロス市警の下水と揶揄されるハリウッド署に左遷されている。そんな彼にベトナム時代の戦友メドーズが殺されるという事件が起こる。銀行強盗事件が背景にあることが分かりFBIの捜査に協力することになったボッシュはロス市警副警視正アーヴィングによる執拗な内務監査を受けながら目撃者の少年シャーキーを見つけ出すがその少年も何者かに殺害されてしまう。

マイケル・コナリーのデビュー作ということだが、主人公のボッシュはすでにいくつかの過去を持った存在として登場し、読者の興味を惹きつける。ベトナム戦争の傷を背景にした作品は多く、私の好きなテリー・ホワイトの『真夜中の相棒』などもPTSDに苦しむ青年と彼に寄り添う殺し屋、そして追う刑事と痛々しく息苦しい思いが重なり合っている。ボッシュも同様だ。内務監査を受け左遷されるに至った事件というのもボッシュの性格を表しているし、ボッシュを目の敵のように追うアーヴィングとの関係も作品を追うごとに明らかになってゆくのだろうと思う。こうして第一作であるにもかかわらず、マイケル・コナリーの中には既にシリーズ作品としての構想とそのための伏線があり、それを『ナイトホークス』で読者に見せたという形なのだろう。FBIの捜査官ウィッシュとの恋愛に似た心の通わせ方も苦く痛々しいところを感じる。

原題の THE BLACK ECHO が英語の慣用として何らかの意味を持つのかどうか私は分からない。だから作品からのイメージだけで解釈するのだが、暗闇にこだまする自分の心の声なのだろう。同時に排水管の中に巣食うホームレスや犯罪者、人生に迷い込んだ者たちの声だ。私たちは闇に迷い込んだ時、自分の声と同時に彼らの声を聴き、その声は重なり合って聞こえてくる。私たちはどうして闇に迷い込み闇を心にとどめてしまうのだろう。そして何故私たちは闇から出ることが出来ないのだろう。そう思うと原題も考え深くなる。

邦題のナイトホークスはもう少しわかりやすく感覚的だ。ウィッシュの部屋に行ったボッシュはそこにエドワード・ホッパーの代表作である『ナイトホークス』の絵がかけられているのを見る。シカゴ美術館に所蔵展示されているこの絵は現代アメリカ美術の傑作であるが、夜の闇の中でガラス張りの窓のカウンター食堂にいる客の姿を描いたものだ。客どうしの距離感とともに少し離れたところからそれを見ている視点が都会の孤独と関係性の距離を感じさせている。ボッシュとウィッシュも同じような孤独をそれぞれに持ち孤独が触れ合う距離で心を通わせる。だから読者は二人の行く末も予感してしまう。

さて、エドワード・ポッパーが登場したのだからもう一人の画家を話題にしない訳にはいかない。ヒエロニムス・ボスだ。この画家はボッシュ自身が親にヒエロニムスとなずけられたと言っているのだがらボッシュの意識の中に常に存在する重要な要素と言えるだろう。オランダの初期フランドル派の画家であり宗教画を描いているが、その作風は独特の幻想的で怪異的不気味さを持っている。代々続く画家の家に生まれたボスは兄弟とともに父親の工房で絵の修業をし三十歳前後に独立している。このオランダの画家と同じ名前を持つハリー・ボッシュ。第一作の『ナイトホークス』では明らかにされていないが、今後どう影響されているのか物語の中で語られるのだろうか。

『ナイトホークス』の上巻を読み終え、いよいよ物語は大きく展開をしてゆく。

ではまた。

テーマ : 推理小説
ジャンル : 小説・文学

『起終点駅 ターミナル』

お元気ですか?

『起終点駅 ターミナル』という映画を見ました。、2015年公開の日本映画で監督は篠原哲雄。

こんなお話し。
学生時代に愛した女性と単身赴任先の旭川で出合い、死に至らしめた判事鷲田完治。彼は自らを責め釧路で一人弁護士をしている。そんな鷲田は裁判の弁護で椎名敦子という女性と知り合う。

タイトルだけで見てしまったが、北海道の風景と人々の関わりが静かに描かれていて良い映画だ。それぞれの役者が気負うところなく演じているのも私には好ましい。鷲田の愛人は尾野真千子が演じていて彼女の演技は私はあまり好きではないのだが今回は許容範囲。対する椎名敦子を本田翼という女優が演じているがどうゆう人なのか知らない。初めて見たが普通感が良かった。
北海道出身者としては、一人暮らしの鷲田がザンギ(鶏のから揚げ)やイクラの醤油づけを作るのを微笑ましく思う。若い判事補が赴任中に北海道旅行をしたいと鷲田に相談するシーンがあるが、これはご当地観光を織り込むエクスキューズのようでストーリーには全く関係ない無駄な部分だ。
最後、鷲田が一人息子の結婚式に向かう車の中、小さかった息子がイクラをつまんで食べる話題が出てくる。私も小さいころからイクラは好物。ご飯もいいが、バターを塗ったトーストにのせて食べるのが今でも好きだ。画面を見ながらほろっとしてしまった。

さて、タイトルだけで見たと書いたが、『起終点駅 ターミナル』というタイトルで真っ先に思い浮かぶのは『終着駅は始発駅』宮脇 俊三著である。鉄道紀行の名著で北海道の駅も出てくる。私も鉄道の風景がいくつも思い出されて懐かしい。ところが、タイトルロールを見ていてこの映画の原作は桜木紫乃の『起終点駅(ターミナル)』だという事に気づいた。桜木紫乃は『ホテルローヤル』で直木賞を受賞した作家で、その時期に私も図書館で数冊を借りて読んだ。ただ、私の好みではなかったのでそれっきり読んでいない。Amazonで本の表紙を見ると確かに読んだと思われるのだが全て忘れている。映画で再開した訳だが私にとっては別のものと出合った感じだ。原作は記憶に残らなかったが映画はどうだろう。

ではまた。

テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

杣人のNuages

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