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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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『わが心臓の痛み』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

マイクル・コナリーの『わが心臓の痛み』を読みました。ハリー・ボッシュシリーズを読み始めた私に『探偵小説三昧』のsugata様からボッシュシリーズではないけれど作品群全体としてコナリーが作る世界をとらえ、登場人物の関りも出てくることから読むべしとのアドバイスをいただきました。そうとなると作品の発表順に読むのが順当な考え方でしょう。そこで Wikipedia を開いて作品リストをプリントし順番に読んでいるのです。

こんなお話です。
元FBI捜査官のテリー・マッケイレブはグラシエラ・リヴァースという看護婦の訪問をうける。彼女によるとマッケイレブが移植で得た心臓はグラシエラの妹グロリアのものだというのだ。コンビニ強盗に殺されたという妹の事件は未解決で犯人を見つけて欲しいという。療養を必要とし車の運転すら禁じられているマッケレイブであったが、犯罪によって得られた心臓、「邪悪な行為による受益者」という自身を苛む思いと犯罪を憎む気持ちとが混ざり合いながら真相を明らかにしようと捜査を開始する。

臓器移植を物語の題材にした作品はあります。提供する側と移植される側共に重たい事情を抱えているのですから物語の題材としては都合が良いでしょう。さらにマイクル・コナリーは犯罪者を仲介させることによって両者を関係つけています。さながら二本の紐にもう一本加えることによって紐を縒っているかのように登場人物の関係性を強固にしてゆきます。しかもその関係性が別な要因からもさらに強固なものとなってゆくのですから読者は主人公マッケレブと一緒になって締め付けられてゆくのです。
この太い紐の周りにコナリーは様々なお楽しみを用意します。作品の発表された1998年、インターネットは普及しはじめ同時にハッキングなどの問題も世間に知られるようになっていますし、ビデオ編集技術の専門性も読者の興味を引くところです。ギャングと経済犯罪はいつの時代にもある題材ですが深い謎という点では読者を刺激します。催眠術を用いて犯罪状況を明らかにしてゆく方法などはあまり知られていないでしょう。そうゆう小道具が上手にちりばめられているので物語にリアリティがあります。そしてこの作品の最大の道具立てと言えるのが原題である BLOOD WORK なのですが、それは読んでのお楽しみなので私が書くわけにはいきません。

さて、解説を書いている西上心太氏によるとハード・ボイルドも時代により変化していて、体制に組しない主人公が権力や組織に歯向かいながら真相を究明してゆき、その過程で現代社会が抱える病巣が浮かび上がるという大枠があるものの、時代が近づくにつれ事件と主人公との関り方が違ってきているといいます。
ハメットやチャンドラーは牧歌的だったのが60年代後半から70年代は公民権運動やベトナム反戦運動といった政治的なテーマとヒッピーなどの文化が入り混じる時代を経験します。ネオ・ハードボイルドと言われる作家なのだそうです。私はこの世代を少し年上のお兄さん世代として認識共有していますが、ノスタルジックな思いともに私自身今でも影響を受け続けていると言えるでしょう。
そしてポスト・ネオ・ハードボイルドと呼ぶのが次にくる時代で、主人公と事件との距離が密接になっているといいます。社会的問題を背景にした事件という視点から主人公が抱える問題と事件とを関わり合わせることで主人公は事件の影響を深く受けてゆくことになります。
そうゆう解説を読むとなるほど『わが心臓の痛み』の主人公テリー・マッケイレブは事件を解決する主人公というよりも事件の当事者、事件そのものと言っても良いと納得するのです。
ハリー・ボッシュはベトナム戦争を経験した刑事として登場し物語のいくつもの場面で主人公の戦争体験が思い出されます。その点ではネオ・ハードボイルドで私が惹かれた所以でもあります。しかし物語が進むと主人公の親子関係など個人的事情も多く描かれて来ていますからポスト・ネオ・ハードボイルドへの移行も見られるのかもしれません。

さて、『わが心臓の痛み』。私が読んだのは扶桑社ミステリーという文庫本ですが、表紙はクリント・イーストウッドです。2002年にイーストウッド自身による監督・主演で映画化されているのです。そこで私が持っているDVDリストを調べてみると持っている事が分かりました。週末、映画を見てみることにしましょう。

ではまた。

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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

『浮世の画家』 カズオ・イシグロ

お元気ですか?

『浮世の画家』を読みました。カズオ・イシグロが昨年ですがノーベル文学賞を受賞したことでどんな作品があるのか知りたくなったのです。『日の名残り』『わたしを離さないで』は映画で見たのですが、文章で読みたいと思いました。ただ、カズオ・イシグロの作品は英語で書かれていますので日本語の翻訳で読むことになるのですが、その部分は少し自分に納得させなければなりません。

こんなお話です。
今は引退している老齢な画家小野は娘の結婚を控えてある思いを抱えている。戦時下にあった頃日本精神を鼓舞する画題を描くことで生きる位置を見出していたのだ。それは恩師や仲間を裏切ることにもつながっていた。過去の過ちを認めながらも時代の中で生きていくために必要な自己正当化、そのはざまで揺れる小野の心は娘の結婚を成功に導くために奔走する姿に痛々しい。街の盛衰と一人の画家の姿を重ねながら苦悩の軌跡を描く。

日本の戦時下、軍の意向に協力的な立場をとってしまい苦悩する芸術家の話はよくあります。石川達三や菊池寛、久米正雄といった作家の存在は知られていることでしょう。私の好きな井上ひさしの舞台『太鼓たたいて笛吹いて』も従軍記者となった林芙美子の生涯を描いた作品です。
ですが、『浮世の画家』はそんな芸術家の姿を問う作品ではありません。私は読み始めてすぐ作品の雰囲気に小津安二郎を感じていました。小津の映画では『晩春』や『東京物語』といった娘と親の関係を描いたものがありますが、この作品でも同様な設定と空気が感じられるのです。

物語は次女紀子の縁談に絡んで小野の心の揺らぎを明らかにしてゆきますが、その描き方は静かに行われます。小野の記憶の描き方はプルーストのようでもあります。どうやらこの記憶を使った作品の描き方はカズオ・イシグロの手法のようです。
様々な要職につき、文化人署名人と呼ばれる人になった小野ですが、時代の風潮の中で選んだ生き方に反省し悔いてもいるのですが反面自己弁護の言葉も持っています。読みながら影響力を持った文化人という存在が小野に過去の重圧として負わされている事に気が付くのです。そして小野の存在が不安定な小さな存在に思えてくるのです。

しかしカズオ・イシグロはそうゆう小野を描きながら決して彼を責めているのではありません。時代と土地に生きる一人の芸術家として、絵画という表現手段をもってしまったために時局に揺さぶられてしまった男として静かに描いているのです。そこにカズオ・イシグロという作家のヒューマニティがあるように思いました。

今回初めてカズオ・イシグロの作品を読んだのですが、少しづつ他の作品も読んでみたいと感じました。

ではまた。


テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

『トランク ミュージック』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

久しぶりにマイクル・コナリーに戻ってきました。しばらく弓道関係の本の読み直しに集中していたので戻れて少しほっとしている自分を発見。

『トランク ミュージック』はこんなお話です。
ハリウッド署殺人課に復帰したハリー・ボッシュ。トニー・アリーソという映画プロデューサーがロールスロイスのトランクで殺害されているという事件の捜査をします。部下ジェリー・エドガーと新しい部下キズミン・ライダー、上司のグレイス・ビレッツも新しくなりました。
捜査を進めてゆくとラスベガスのギャングと被害者につながりがあることが分かり、どうやら映画プロデューサーという仕事を通じてギャングの資金洗浄をしていたらしい事が分かってきます。この辺の裏事情はマイクル・コナリーらしい面白さです。
そして物語を二転三転させるのもマイクル・コナリーの手法。幾つかの証拠も見つかり逮捕した男が潜入捜査官と分かり逆に証拠ねつ造を連邦検事から疑われ内務監査を受けるボッシュ。しかしここらあたりからボッシュの本領発揮で独自の捜査を始めます。とはいっても今回は部下や検視官との協力、方向が見えてきたところで上司ビレッツにも説明をするなどボッシュは一人で暴走するというわけではありません。すこし丸くなった感があります。

さて、今回の作品で最も重要なのは第一作『ナイトホークス』に登場した元FBI捜査官エレノア・ウィッシュの登場です。犯罪に手を染めてしまったエレノアは刑に服し裏切られた形のボッシュは心に深い痛みを抱えることになっていました。そのエレノアをラスベガスでしかも捜査対象者に関係しているらしい状況で発見するのです。ボッシュはエレノアに接触しなければなりません。読者としてはエレノアの再登場を喜びながらもまたしてもボッシュが苦しむのではないかと感じだします。服役した元FBI捜査官が生きてゆくのは簡単な事ではないはずで、そんな彼女がカジノにいるのですから胡散臭い想像をするのは当然です。ボッシュがエレノアと愛を交わすようになってからも何処に落とし穴があるのかとハラハラしながら二人の関係を読まなければなりません。
しかもそんなエレノアの存在もボッシュを疑う連邦検事から攻撃の材料にされるのです。

全体を読み終えてみると幾つかの消去法を経て犯人は落ち着くところにいます。正直なところ最初から読者は分かっていながら読むといった方が近いかもしません。しかしマイクル・コナリーの迷路を進めて壁にあたってやり直すような物語の展開に付き合っているうちに、ついつい真犯人の事など作品の大事ではなくなっているのです。今回の『トランク ミュージック』では新しい上司はボッシュの能力を評価し信頼を寄せているようですし、部下も同様です。宿敵のような副本部長アーヴィングでさえボッシュに理解を示しているように思えます。そしてエレノアの登場。読者はエレノアを『ナイトホークス』の時から悲しい存在として優しい目で見ています。それだからこそボッシュとの成り行きに心配をするのです。
さて、エレノアとの結末はここでは書かないようにしましょう。実は私には今回ささやかな発見がありました。それは私がボッシュのシリーズとしては最新(翻訳ものとして)の『転落の街』から読んでいる事に起因します。『転落の街』にはボッシュに素敵な娘がいる事が分かっています。私がボッシュのシリーズに心惹かれたのはこの娘の成長をボッシュと一緒にみたいと思ったからに他なりません。作品を読み重ねてゆくことは迷路を進むゲームのようなものです。マイクル・コナリーが一つ一つの作品に迷路を仕掛けているならシリーズの構成にも迷路は潜んでいます。しかし私はボッシュに愛して信頼している娘がいることを知っているのです。出口のない迷路を進むのではなく、出口があることを知りながら迷路を楽しむことが出来るのです。

次は御指南いただいている『探偵小説三昧』のsugata様のアドバイスに従い『わが心臓の痛み』です。ではまた。

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

今年の京都 GW編 鴨川をどり

お元気ですか?

GWを利用して京都に来ていますが、三日目の今日は弓道の用事のためお遊びは少し。そこで鴨川踊りを見る事にしました。

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歌舞練場というのは祇園甲部の芸子舞妓さんたちが京都博覧会に初演された際に都踊りを練習するためにつくられた練習場ですが、常設劇場として残り、現在では祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒がそれぞれと祇園東の祇園会館があります。
今回私たちが見たのは先斗町にある歌舞練場で行われる鴨川をどりです。当日券なら朝10時からチケットを販売し2300円というお安い値段で楽しむことが出来ます。
そこで、弓道場に出かける途中パートナーさんを降ろして買ってきてもらいました。私は車の中で待っていたので様子は伝え聞くばかりですが、すでに列を作って待っているお客さんがいたり、練習場の前に緋毛氈のかかった床几が用意されていたりと賑やかな状況だそうです。二階のお安い席で座席は選ぶことは出来ませんが短い時間ですし十分です。

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私たちは一日三回ある最後、4時10分からの公演ですが3時半ぐらいに着くとすでに入場をさせています。前の会はまだやっていますが三階の休憩場に通されしばし歓談。扇子や手ぬぐい、プログラムなどおみやげ物を見ているお客さんもいますし、歌舞練場からの鴨川の眺めを楽しむこともできます。

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時間がくると案内が始まり席につきます。一階の少しお高い席は旅行会社などを通じて予約したお客さんもいるようです。桟敷席もあります。千鳥の緞帳に提灯。先斗町の歌舞練場は近くの料理やさんに時々来ていたのですが中を拝見するのは初めて。昭和2年に建てられたそうですが、当時としてはモダンな洋風建築です。

公演は写真を撮れないのでご紹介は出来ませんが、今年はシェークスピアの『真夏の夜の夢』を題材にしたお芝居と踊り七景。お芝居では笑いもありお客さんは華やかな中にもリラックスした雰囲気です。踊り七景はやはり息を凝らしながら見入ってしまいます。西洋のバレエでもダンサーの動きや肉体のコントロールに感嘆しますが、日本の舞も姿形の美しさだけではなくそれを生み出す芯を感じます。

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約1時間半の舞台を拝見しとても気持ちよくなって歌舞練場を出てきました。木屋町通の方に出ると、今は細くなった高瀬川が流れています。京都の街はまだまだ人通りも多いので裏通りを歩きながら古いお店や古いお店をリノベーションした新しいお店、そんなお店を眺めながら今夜のレストランに向かいましょう。




テーマ : 国内旅行
ジャンル : 旅行

『羊と鋼の森』 宮下奈都

お元気ですか?

『羊と鋼の森』を読みました。2016年 第13回本屋大賞を受賞したので知り図書館に予約したので約1年ほど待ったのでしょうか。確か私の予約時には200人ぐらいの予約者がいたと思います。この間図書館も在庫を増やしたでしょうし、予約をキャンセルした人もいたでしょう。面白いのは直木賞や芥川賞、本屋大賞など新しい賞の発表があると予約待ちの数字がぐぐっと減るのです。

さて『羊と鋼の森』のお話はピアノの調律師の世界を描いたもの。演奏家が弾くコンサートホールのピアノから家庭に置かれたアップライトの普及版のピアノまで様々なピアノを調律しながら弾く人の姿、調律師の思いなどが丁寧に描かれています。もちろん調律師の過去や経緯も様々で物語に厚みを生んでいます。主人公は学校に来た調律師との出会いからこの職業につきますが、それまでピアノを弾いたこともなければピアノ曲を聴いたことも無いという設定が少し特異な感じを受けますが、その分何もないところに組み立てられてゆく姿を描きたかったのでしょうか。

文章は少しイメージ先行な感じがして好き嫌いが分かれるように感じます。私には少し煩かったようです。物語は朴訥な主人公がこつこつと生きて成長する様が描かれていて好感が持てますが、ドラマ性を求める方には物足りないかもしれません。
読んでいると主人公の出身、物語の舞台が北海道であることが分かります。その点では私のポイントは甘くなります。

さてピアノの調律師さんと知り合う方ってどの位いるのでしょう。私の子供時代は日本の経済成長にともなって家庭にピアノが普及した時代でした。クラスにも何人もピアノ教室に通っている子供がいました。かくゆう私もその一人。私の通っていた教室の息子さんが調律師になったとの話を聞いたのが調律という仕事を知った最初でした。
次に出合うのは「四季・ユートピアノ」というテレビドラマ。1980年にNHKのドラマディレクター佐々木昭一郎氏により作られた作品です。このドラマによって佐々木氏は一般にも良く知られるようになってファンが増えました。「四季・ユートピアノ」の主人公も雪深い土地(青森かな)から東京に出て来てピアノの調律師になります。
音大のピアノ科に進むような方、音大に行かなくても趣味でピアノを弾く方なら調律師さんは大切な存在です。ステージピアノや家庭のピアノ以外ではメーカーの工場で働く調律師さんもいます。皆さんきっと良い耳をしているのでしょうね。

私の住む町は楽器の街でピアノメーカーもあります。きっと街には沢山の調律師さんが歩いているのでしょう。そんな一人一人が『羊と鋼の森』の調律師さんたちのようにドラマを持っていると思うと、ちょっと楽しくなりました。

ではまた。


杣人のNuages

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