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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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高田郁と北原亞以子

お元気ですか?

夜になると我が家の周りの木々にいるであろう虫たちが鳴き声を聞かせてくれます。みなさんは虫の声を聞き分けることができますか?私はちょっと苦手です。
NHKのTVを見ていたら駅ピアノという番組がありました。ロンドンやプラハの駅に置かれたピアノに通りすがりの人が座り好きな音楽を弾いて楽しそうです。小さい子供もいればピアノを習いはじめたばかりの大人、プロの音楽家も弾いています。見ているとこちらまで楽しくなってきます。
あぁ、楽しいな私もまた弾きたいなと思ってしまいます。実家にあったピアノは帰省のたびに弾いていましたが今はありません。いつかまたピアノのある家もいいかなと思います。一緒に演奏する家族がいればさらに楽しいでしょう。

高田郁のみおつくし料理帖という本を読みました。
朝、TVの経済番組を見ているのですが、その中で製薬会社の社長さんが紹介する本として登場したのです。食べることの大好きな私、料理をテーマにした時代小説ということだったので好奇心がうずうずしました。早速Bookoffに行って買ってきたのですが、喜んで買って来たのは『天の梯』というシリーズ最後の本でした。でもいいのです。
読んでいるうちにすこし鼻についてきました。江戸時代の設定なので散りばめられた言葉も時代がかっているのですが、私の感覚から言えば、言葉が生きていません。言葉の持つ音、リズム、登場人物たちが演じる情景がどうも江戸時代の町家ではないのです。読み進んでいるうちに、漆塗りの器にマジックか塗料を塗った感じがしてきました。ちょっと残念ですね。

私は食べることが好きですし自分でも料理をします。だから食物に関係する本があるとついつい手にとります。池波正太郎は小説は読みませんがエッセイは読みます。食べ物話が豊富ですから。夏目漱石を食べ物をピックアップしながら読んだりもします。だから高田郁のみおつくしシリーズも1冊目から読みたいとは思いますが、さて無事に読むことが出来るでしょうか。

そんな感想を持ちながら頭によぎったのが北原亞以子の本でした。深川澪通り木戸番小屋のシリーズや慶次郎縁側日記のシリーズでファンも多い女性作家です。NHKのドラマにもなっていますのでそちらでご存知の方もおおいでしょう。
実は私も木戸番小屋のシリーズを神田正輝、池上季実子の主演の金曜時代劇で知った一人でした。北原自身が新橋の生まれというのを差し引いてもしっかりした風景描写と登場人物たちの息遣いが江戸の町家を想起させます。
北原の前に樋口一葉が思い出されたのですが、北原亞以子を読みたいと切実に思いました。口直しと言うか軌道修正というか。(高田郁さんごめんなさい)

そこで、北原亞以子の本を図書館で借りてきました。『こはだの酢』という文庫本です。やはり食べ物のタイトルです。こはだの押し寿司をもらった主人公が誘惑に負けてつまみ食いをしてしまう話です。読みながらこはだの酢じめが食べたくなりましたし、私が愛用している押し寿司用の木型が思い出されてきました。北原亞以子の作品には弱い人間が色々出てきます。読んでいるうちに自分と重ねちょっと恥ずかしくもなりますし、いたたまれない気持ちにもなるのですがそんな情けない人間が織りなすのが人の世界なのでしょう。ちょっと辛いですね。
オー・ヘンリーにも似た弱く情けなくて苦笑いしてしまう人間の姿。

こはだの押し寿司は初春を待ちますが、今夜は美味しいものを作って食べましょう。辛い人の世に幸せを感じさせる一椀一皿を用意しましょう。



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テーマ : 読書
ジャンル : 小説・文学

『償いの雪が降る』 アレン・エスケンス

お元気ですか?
久しぶりのブログです。ご無沙汰してごめんなさい。

アレン・エンキンスの『償いの雪が降る』を読みました。バリー賞ペーパーバック部門最優秀賞、レフトコースト・クライム・ローズバッド賞デビュー作部門最優秀賞、シルバー・フォルシオン賞デビュー作部門最優秀賞の三冠に輝き、エドガー賞、アンソニー賞、国際スリラー作家協会賞の各デビュー作部門で最終候補作になっている。と訳者あとがきにあるが、私にはその賞の重要度が分からないので、あぁそうなんだとしか言えない。この世界に詳しい方にお叱りを受けるかもしれないので、ごめんなさいと言っておこう。作品がデビュー作が持つ独自の力、作家の原点を内包したものであり、エージェントや出版社の政治的思惑に距離をおいていることを願おう。

この本を読んだのは冠が多かったからではない。パートナーさんが図書館で借りる時についていって、どんな本?と訊いてしまったからだ。

こんなお話
大学生のジョーは身近な年長者の伝記を書くという授業で、老人介護施設に入所している末期がんの男カールから「臨終の供述」を聞く事になる。冤罪事件だという彼は三十年前に少女への暴行殺人で有罪になっていたのだ。
カールは「臨終の供述」は真実の言葉だと言い、ジョーは隣人の女子大生とその事件を調査することになってゆく。自閉症の弟のサポート、女子大生とのロマンス、それぞれに秘めた過去、そしてカールが体験したベトナム戦争の悲劇。それらを織り交ぜながら物語は進んでゆく。現代の作品でどうしてベトナム戦争なんだろうかという思いが正直なところ浮かんでくる。もう50年前の戦争だ。
実際、物語に登場するベトナム戦争は特にベトナム戦争でなくてもいいような程度にしか関係しない。

とはいえ、物語はそこそこにテンポも良いし、それぞれの状況も上手にかみ合っていて読み手を飽きさせない。主人公ジョーのひたむきに生きようとする姿は年齢相応のかわいらしさを持っているし、隣人の女子大生も特別な存在感とまでは言えないが役どころとしては嵌っている。自閉症の弟ジェレミーの存在は何故自閉症でなければいけないのかと少し不信感を持って読んでいたのは最近この手の登場人物が多いように思うからだ。一時期、CIAの情報分析官やFBIのプロファイラーがあふれたのと同じ感じ。しかし本作では謎解きに一役買い、ジョーが兄として大人になってゆくのに必要な役割を担っている。

登場人物が出揃うと、読者には犯人捜しというお楽しみが待っている。実は「臨終の供述」のカールがやっぱり犯人だったとか、突然出てきた男が真犯人だったとかそんなルール違反は無いとして、犯人は登場人物から選んで行かなければいけないが、物語の中でも一人一人ふるいにかけられているから、ふるいの網にかからなかった者が犯人だと推測はつく。後半ではジョーと隣人のライラが犯人と思う人間が暗号を解くという手腕を発揮して浮かんでくるが、残念ながら目星がつくのが早いのでこれも違うだろう。
となると自ずと絞られるので案外真犯人は分かりやすい。そんなお楽しみも普通に楽しめる。


作者には本作に登場したルパート刑事の弟を主人公にした作品ややはり本作に出てきたサンデン教授を主人公にしたリーガル・サスペンスも書いているらしい。登場人物を他の作品にも使いながら世界を広げてゆくのは常套手段だが、機会があれば読んでもよいだろう。

ではまた。




テーマ : 読書
ジャンル : 小説・文学

『ぼたん雪が舞うとき』

お元気ですか?

劇団青年座の『ぼたん雪が舞うとき』というお芝居をテレビで見ました。2011年3月の東日本大震災の福島第一原発事故により立ち入り禁止区域に取り残された夫婦を描いたお芝居です。
原発事故や原爆をテーマにしたお芝居というのはこれまでもあります。絵本作家、レイモンド・ブリッグズ原作による『風が吹くとき』はアニメーション映画にもなり日本でも多くの人がご覧になっていると思います。しかし今回の『ぼたん雪が舞うとき』というお芝居は作者の高木達氏がご自身福島の実家に帰省していて体験した事をもとに劇を書かれたのだと言います。津波から逃れた高木氏は翌日12日、テレビのテロップで原発から半径20㎞圏内の住民に避難指示が出たのを見ます。「これは逃げなきゃいけない」と思ったそうです。ここで逃げた人と逃げない人とが出てきます。そして20㎞から30㎞圏内の逃げない人には屋内退避という指示が出されます。
冷静に考えれば分かることですが、避難指示が出ているということは放射能の線量が高いということです。第一原発の状況も分からずこれからどうゆう被害が起こるのかも分からない段階で避難しないという判断はありません。災害でも犯罪でも身を守る基本は危険な現場から速やかに離れる事です。
実際原発はメルトダウンを起こしますし救援物資を運ぶトラックや警察、消防などの立ち入りも出来なくなってゆきました。
そうゆう刻一刻と深刻化してゆく被害のなかで、屋内退避を選択した人たちは情報もないまま孤立化していったのです。中には高齢で体が思うように動かなかったり、家族に障害をもつ人がいて避難所へ行くことを遠慮した人もいたでしょう。本人の望まない形で自宅での屋内退避を選択せざるを得なかった人たち、災害弱者と呼ばれる人たちが生まれていたのです。

私たち人間は悲劇の中に喜劇を見ます。劇の中で初老の夫婦は自宅の奥まった部屋に避難をし、換気口を塞ぎます。配給所でもらったインスタントラーメンをお湯が沸かせずそのままかじったり、粉ミルクを舐めてむせたりします。実際にこうゆう事はある話ですし私たちはそれを無知だとか準備不足だとかと非難する事は出来ません。
夫婦は極限の生活をしながらも、家族のアルバムを開いては親への感謝を言葉にしたり、娘が連れてくる初孫に会う事に期待を膨らませるのです。

今年は私たちの周りで大きな災害が起き、九州・四国・広島など西日本の人たちを思い心を痛くする日が続きました。先月北海道の地震で実家が停電になった時にはLineで従兄に連絡をとり母の様子を見に行ってもらいました。劇の中でもフランスに住む娘が携帯電話に連絡をよこすのですが、電気がないため携帯が切れて通話が途切れてしまうシーンがあります。被害にあっている現地より外の人間の方が状況を把握できるという事があるのです。

先日の台風で私の住む街でも大規模な停電が起こりました。夜中、電気がついたり切れたりしていると思いながら寝て、朝完全に停電になっているのを知ります。テレビもパソコンも使えませんから情報を得るのは私のiPhoneでラジオのニュースを聞くばかりでした。ちょうどその朝はパンを焼き、ご飯を炊く日だったので朝どちらも出来ていなくて朝食をとることが出来ません。水道も出ませんから夜のうちに溜めておいた水で身づくろいをし、パートナーさんは職場へ私は道場へ出かけました。パートナーさんの職場は地域の基幹施設ですし自家発電もあるので機能しているのです。私の場合は電気が通じないと本を読むぐらいしか出来ないので道場に出かけて練習でもしようと・・・。
ところが、道場へ向かう道は信号機が停電で機能していません。ところどころ倒木のせいなのか道路封鎖もあり迂回しなければなりません。警察官も出ているのですが、すべての交差点に配備できるわけもなく、交差点ではお互いに相手の動きを察しながら手だったりアイコンタクトをとりながら注意して進みます。こうゆうところは日本人ってジェントルだと改めて感心します。
道場は雨どいやシャッターが壊れ屋根の鬼瓦が飛んでいました。掃除をし応急処置をして練習をしますが、市の施設ですから直るまでに時間はかかる見込みです。
お昼、コンビニは停電と配送遅延のためお弁当やパンといった食べ物は全く無く、スーパーも同様でした。皆さん少しでも商品がある処に来るのがよくわかります。コンビニでは懐中電灯や電池が売れ、携帯電話の充電池が売り切れていましたが停電なのにちょっと不思議な感じです。道場は幸い電気が通じていたので充電でき、お湯も沸かしてお昼を頂くことができましたが、市役所の行政放送では充電設備のあるところを紹介していました。

私たち人間は自分に都合の悪い解釈からは避けて通る傾向があります。株で買った銘柄が下がりだしてもまだまだ大丈夫と思って損が広がるなんて典型的な例です。だから災害の時の備えというのもいざ災害に合ってから考えてはだめなのです。コンビニに行けば食べるものがあるだろうと思ってもありません。電気はすぐに復旧するだろうと思っても当地では最大四日間も停電が続きました。私も含めて皆自分に都合の良いように思いたがるのです。今回の災害でそのことを私は改めて感じました。

芝居を見ながら、行政の指示に注意するとしても大規模災害になったら最後は身を守るのは自分の判断だという事を感じます。屋内退避の指示を守りながら飢えや寒さに耐え薬も無く死んでゆくなんて悲劇はご免です。自分の命は自分の判断で守る。そのためにも普段から備え、孤立しないためにも地域のコミュニティーを大切にする。情報を集めながらも正しい情報を見極める知見を持つ。希望を支えあえる家族を大切にする。そんなことを考えます。

物語の最後、初老の夫婦は隣近所は逃げ出し孤立した家の窓を開けます。空からぼたん雪が降ってきています。でもこれは本当にぼたん雪なのでしょうか。私には死の灰に見えます。私たち人間が作りながらも最終処理の出来ない原子力の灰に埋もれて私たちは死んでゆくのでしょうか。

ではまた。

テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

『バッドラック・ムーン』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

マイクル・コナリーの『バッドラック・ムーン』を読みました。原作はVOID MOON となっていてVOIDは欠落したとか空虚なといった意味なので訳本のタイトルとは少し意味が違っています。

こんなお話です。
仮釈放中の泥棒キャシーはある事情からまとまったお金が必要になり、仕事仲間で恋人だったマックスの兄レオに相談する。レオが紹介してきた話はクジラと呼ばれるカジノの上客からギャンブルで稼いだ金を奪うことだった。しかし、ホテルの客室に忍び込み首尾よく奪ったはずの金はマフィアに絡む金でキャシーは窮地に立たされてしまう。キャシーが奪った金を取り返すよう指示を受けたのは裏の顔を持つ私立探偵カーチで、キャシーとも因縁のある男だった。

ハリー・ボッシュシリーズを軸にマイクル・コナリーを読むということなのですが、『ザ・ポエット』や『わが心臓の痛み』のようにボッシュシリーズとは少し離れた作品があってこの『バッドラック・ムーン』もその一つです。派生的に生じたという意味ではスピンオフ作品といえますが、マイクル・コナリーの中では『ザ・ポエット』の記者マカヴォイ、『わが心臓の痛み』の元FBI捜査官マッケイレブもボッシュの世界と交差して一つのコナリーワールドを作っているようです。

さて、今回の新しい女性の主人公キャシーはこれまで男性の主人公ばかりでしたのでコナリーの新境地開拓かと思われます。それはそれで読者には嬉しいことなのですが、私には正直なところ物語があまりにも普通です。ラストシーンのキャシーとカーチの戦いはもうすっかり読む前から分かっています。私でも分かるのですからミステリー好きの読者の方には当然でしょう。とすると何故マイクル・コナリーはそうゆう物語を書いたのかという謎が残ります。
本書の解説を書いている木村仁良氏は次のように書いています。「ボッシュものは12作目まで書く予定らしい。コナリーによると、ボッシュものを書くということがだんだん難しくなってきたという。ボッシュについてはほとんどのことを書いてしまって、書き残した新鮮な面が少なくなっているからだ。」
木村氏がこう書いたのは2001年ですから現在私たちはボッシュシリーズが12作どころかその倍もシリーズが続いていることを知っています。しかしこの時期コナリーは作品造りに苦しんでいたのかもしれません。気分転換のためにキャシーを書いたのでしょうか。コナリーがどんな作家作業をするのかしりませんが、筆力が落ちた時にエンジンの調子をみるような感じで流し運転のように本書を書いたのかもしれません。
だとすると、マイクル・コナリーがどのような切っ掛けで書き続ける事が出来たのか、その転機となるような作品は何なのかという興味が湧いてきます。『バッドラック・ムーン』は私にはそんな作品でした。

ではまた。

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

『堕天使は地獄へ飛ぶ』 マイクル・コナリー

お元気ですか?

西日本一帯に被害を及ぼした豪雨。被災した方々にお見舞い申し上げます。私には親戚や友人はいないのですが、それでも知り合いには岡山や広島の出身の方、九州や四国に住む方などがいますから少なからず気になる事。早く平穏な日常が戻ることを願います。

久しぶりに本屋さんに寄ったら平台に「新潮100選」や他の出版社の同じ企画が対比されるように並んでいました。パートナーさんは学生時代に「新潮100選」を読んだことを今も懐かしく話しますが、夏休みなど学生でまとまった時間がある方など集中的に読書に取り組んでみるのには都合の良い企画かもしれません。読書になじみがない方、どんな本を読んで良いかわからず切っ掛けがつかめない方、そんな方にも良いかもしれません。私のように読書の傾向が固まってしまっている方にも思わぬ出会いがあったりするでしょう。平台を眺めながら昔からの定番の本を見て懐かしく思う反面、全く知らない作家の作品があったりして複雑な気持ちになります。私自身これから先の読書ではまだまだ読み足りない古典的作品をきちんと押さえていきたいと思っているのですが、「100選」に知らない本が増えてゆくのは読書好きの一人として少しおいてけぼりを喰らわされている感じです。
そうは思いますが、本との出会いは縁ですし、その縁がどう広がってゆくのかも面白いところなのでたとえ「100選」に自分と出合わない本があったとしても仕方の無い事です。一冊でも良いので一生傍に置いておきたい本と出合う事の方が大事ですし気持ちの良いものです。

先日、友人と話していたら中学生になるお子さんが自分に読解力が足りないことに気づいてどんな本を読んだら良いかと尋ねてきたと言っていました。私自身子供の頃に親に本の相談をしたこともありませんし大人になって誰かに本を勧めたこともありませんので少し羨ましく、素敵な親子関係だなと温かい気持ちになりました。その方は自分が愛読した梨木香歩の『西の魔女が死んだ』をお嬢さんが読んでいるのを嬉しそうに話してくれましたが、親子で本を読みつないでゆけるなんて全く素敵なことだと思います。
この夏、世界中でそうゆう経験をする親子が生まれることを心から願います。

マイクル・コナリーの『堕天使は地獄へ飛ぶ』を読みました。コナリー9冊目、ボッシュシリーズ7冊目です。
こんなお話。
ロサンジェルスのダウンタウンにあるケーブルカー「エンジェルズ・フライト」の頂上駅で死体が発見され、アーヴィング副本部長からボッシュは呼び出されて現場に向かう。そこには黒人で人権派弁護士として知られるエライアスと黒人女性の二人が銃による惨殺された姿があり、緊張した空気が流れている。ロサンゼルス警察にとってエライアスは宿敵ともいえる弁護士で近く市警察を相手にする訴訟が開始されることになっていたからだ。警官による犯行も視野にいれながらの捜査を担当することになるボッシュ。
警察の不正、人種問題など神経質な状況を控えながらボッシュは思いがけない事実を発見してゆく。

またしてもコナリーによって新しい物語を楽しむことができました。警察官自身が捜査対象になる場合どうゆう捜査が行われるのかというのはあまり知る機会が無いように思います。特別監察官カーラ・エントリキンの確認の下捜査をしなければいけないというのはボッシュにとってやりにくい捜査です。しかしボッシュは自分の自由度を奪う特別監察官に職制として理解を示すことで対処します。警察が市民の目を気にするなかボッシュは事実を積み重ねてゆこうとします。組織の思惑と戦わなければならないのもボッシュシリーズの定番です。
一方ボッシュ自身も妻であるエレノアとの関係に悩みを持っています。元FBIの捜査官であったエレノアはギャンブルに身を置くことで心の居場所を得ているのです。
いくつもの読みどころを用意しているマイクル・コナリーはサービス精神満載の作家なのです。

さて、今回のお楽しみの一つはケーブルカーでしょう。「エンジェルズ・フライト」というケーブルカーは世界一短いケーブルカーと言われ、グランドストリート、オフィス街のバンカーヒルと下を走るヒルストリートを結ぶケーブルカーです。全長90.83メートルで乗車時間は数分。オレンジ色の車体に黒で縁取られたケーブルカーは1901年から運行を始め、1996年に再開発で現在の所に移り安全上の理由で2013年に運行を取りやめていたのですが、現在は再開しています。
最近ではミュージカル映画「ラ・ラ・ランド」にも登場していますから観光名所として訪れる方もいるのでしょうね。

私もいつかロサンジェルスに行ったら此処だ此処だと喜んで乗るのでしょうね。
ではまた。

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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