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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
Nuages・・・雲のようにふんわりとしています

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さよなら「富士・はやぶさ」

午後のTVニュースで、
今日でブルートレイン「富士・はやぶさ」の運行が
最終日であることを伝えていた。

上野から札幌を目指す、北斗星やカシオペア
大阪から日本海を北上するトワイライトエクスプレスなど
豪華な個室寝台車で人気を得た列車とは別に
「富士・はやぶさ」は利用客の減少に苦しんでいた。

子供の頃から寝台車を利用して旅をしてきた私も、
関西方面に寝台車をつかう機会が無く、一度は乗りたいと思っていた。

そこで、九州に出張を作り出かけることにした。
年配の同僚で、気心の知れたTさんにも同行してもらうこととし、
切符を手配した。

Tさんのお父様は国鉄の要職を勤めた方、
鉄道はもとより大人の遊び心溢れるおしゃれな人。
家族パスで列車も乗り放題だったから、列車の遊び方も心得ている。

仕事を終え、東京駅の地下で待ち合わせ、デパートの食品売り場で
おつまみになりそうな具いっぱいの弁当とお酒を買い込む。
私はワインを選び、彼は焼酎を選んだ。

「富士・はやぶさ」には食堂車も無く、車内販売もなくなっていた…

列車に乗り、席につくが、同じハコに他のお客さんは一人しかいない。

遠慮は無い。弁当を広げ、酒盛りをはじめる。
Tさんの若い頃の話、大学生の頃のジャズ喫茶でのアルバイト
実家の町での就職と東京転勤。
先輩に誘われてはまったスキューバダイビング…
Tさんの広範な知識と同様に経験がそのまま彼の姿を作っている。

ひとしきりおしゃべりをし、食べたのでサロンカーを覗いてみる。
自動販売機と椅子があるが、利用客は3人ほどしかいない。
そりやそうだ、椅子が置いてあるだけではサロンではない。
覗くだけにして、戻り、寝酒をいただいて寝ることにした。

朝、広島の手前で目が醒めた。
瀬戸内海を通路の折りたたみ椅子に腰かけながら眺めていると
Tさんは亡くなった友人の事を話し出した。
「この近くの出身だったんだ」と。

下関に着いたので、私はホームに降り「ふぐうどん」をTさんに薦め、
彼は私の熱いお薦めに笑って付き合ってくれた。

小倉を通過し、博多で降りる。
東京を6時に出て、朝の10時に着いた。
これから会議を一つ、その後知り合いの天ぷら屋さんで遊ぼう。

*********

Tさんはもういない。

一緒に「富士・はやぶさ」に乗った2年後、私は職場を辞め、
残ったTさんは私の分まで忙しくなっていった。
そして、肺癌で亡くなった。
癌と気がついてから、半年だった。

ジャズバー、場末の居酒屋、古本屋遊び…
共通の話題の多かったTさん。

「富士・はやぶさ」は、Tさんの思い出と一緒に私の中に生きている。

会って一杯やりたいな。

「富士・はやぶさ」とTさん。 楽しい時間を有難うございました。

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テーマ : 鉄道旅行
ジャンル : 旅行

旅の思い出…ヨーロッパ編1-3

お元気ですか?

今日も、昔々のお話。
でも、つい昨日のことかもしれません。
時の流れは人によって違うもの… これは私の中に留まった時間なのです。

**************

旅の思い出…ヨーロッパ編1-3

国境の町で大勢の人を乗せた列車は車輪を引きずるように走り出しました。
私の向かいに座った50歳代の大柄な女性も、通路に溢れかえる人たちも、
オーストリアに出稼ぎに来ていたユーゴスラビアの人たちです。
棚に載せた大きな袋からはティッシュや洗濯洗剤、衣類などの
生活物資があふれています。

オーストリアで働き、ハンガリーから列車に乗ったほうが切符代も安いのでしょう。
故郷に帰る人たちは列車に乗った安心感か、それとも働きずくめの疲労からか
だれもが無口です。

列車は21:40にハンガリーの首都、ブタペストに入りました。
ドナウ川を挟んで栄えたブダペストはローマ帝国やハンガリー王国、
オスマン帝国にハプスブルグ家の統治と
地政学的収奪の歴史の舞台となってきた土地。
歴史的建築物も多く、世界文化遺産にも登録されている町ですから、
旅の途中に立ち寄りたいところですが、
今回は列車の窓から夜の街を記憶にとどめましょう。

ブタペストを離れてしばらくすると、国境警察が部屋を見回りにきました。
2人一組で、自動小銃を肩から提げています。
パスポートを提示すると、話しかけられる事もなく一瞥しただけで返されました。

さぁ、寝るとしましょう。
4人の学生達もおしゃべりを止めています。
向かいの女性はなにやら硬い表情…

列車は重たい響きをさせながら夜の草原を走ってゆきます…

目が醒めると6時半ぐらい…まだ太陽は低いようですが、
次第に白み始めた空を眺めて、
東ヨーロッパを走っていることを思い出します。

8:00、ユーゴスラビアの首都、ベオグラードに到着です。
ヨーロッパでも最古の都市ですが、やはり不安定な政治が続いています。

駅に停車した列車の周りには、早速物売りが集まってきます。
殆どがパンや飲物、揚げ菓子や果物のようなものを首から提げた籠に載せ
列車の窓の下を歩いています。
でも、日本の駅弁売りのように抑揚のある声を上げることはありません。
列車に乗っている人も、ホームに降りて買っています。

私はといえば、お金を持っていませんから買うことができません。
本当に残ですけど、せっかくのユーゴスラビアの駅弁売りを
文字通り、指を咥えて見ているしかなかったのです。

私の食事はウィーンで買ったパンとソーセージ、それに水です。
ソーセージはサラミなので、少しずつ切って食べますが、
パンはぼそぼそしていて、あまり美味しくありません
正直なところ飲み込むのに、悲しくなってしまいます。

ユーゴスラビアの白く乾いた大地は、
農作物が育つのだろうかと思わせます。
しかも、車窓から見える農家は駅を離れて行くにしたがって
家周りの柵も貧弱になり、壁のレンガも崩れたような建物。
南に進むにしたがって、貧しさが増すのでしょう、
家の造作はどんどん粗末になり、レンガ壁が土壁になり、
その土壁も崩れて中の木が見えたりしています。

家畜の姿も殆ど見えません。

途中停まった駅も、ホームのような設備は無く、
わずかに、石畳が線路に沿ってあるだけ。少し離れて小さな駅舎があるばかりです。
でも、駅では必ず村の人たちが集まり、列車から降りる人を迎えています。
トラックで来て、大きな荷物を皆で積み上げては村に引き上げてゆくのです。
それほどに待ちわびた家族であり、大切な働き手なのです。

私の向かいの女性も、バッグやショールをたたんだりして
心がはやるまま、落ち着き無く準備をしています。

遠くの低く木も生えていない山と、近くの作物も見当たらない土地を
見ながら、朝と同じパンとソーセージを食べてたら
突然、女性が私に食べなさいって、リンゴと胡瓜をくれました。

嬉しかった… 
ギリシャに着くまでもう一泊、車内にいなければなりませんし
食べ物を買うこともできませんから細々と食べていたのです。

お礼を言い、頂いた胡瓜をぼりぼり食べました。
女性は話しかけてこようとはしませんが、私が食べるのを見て
安心したように、椅子にどっかり座っています。

夕方、列車は田舎の駅に着きました。
名前も分らない小さな駅。
電信柱に小さな明かりが灯っているのが悲しげです。

女性は、椅子から立ちコンパートメントのドアを開けると、
通路を確認し、私に荷物を降ろすのを手伝うように言いました。

一宿一飯の恩というものがあります。

棚の大きな荷物を降ろし、女性と一緒に客車の外のドアの処まで
運び出すと、女性を迎えに来た村の人が受け取ってトラックまで運びます。

小さな村なのでしょう。他に数人が荷物と一緒に降りてゆき、
それぞれに出迎えの人と一緒に帰ってゆきます。

コンパートメントに戻ると、
学生4人が、私の顔を見ていましたが、
しばらくすると、空いたコンパートメントに移っていきました。

ギリシャまでもう一泊。
列車は夜の底を息を懲らして走ってゆきます。

************

その後、ユーゴスラビアは長い内戦の時代に入ります。
国が分割され、各地に自治区が出来、
ロシアやNATOの思惑の中、苦しい時代に入ってゆきます。

あの日、女性は自宅に帰り、沢山の生活雑貨を届け
家族の笑顔に囲まれたことでしょう。
子供や孫のお土産を開いては、美味しい夕飯を頂いたことでしょう。

でも、多くのユーゴスラビア人と同じように
砲弾の中、生命の危険にさらされたであろうことは想像に難くありません。

ウィーンからの国際列車は、国をまたいで働く人の出稼ぎ列車であり
たまたま乗り合わせた私は明らかに異邦人でした。

せめてもの事、
同じ列車に乗り合わせたユーゴスラビアの人達を思い、
内戦という悲惨な事態に巻き込まれたあの女性と家族を思い、
命があり、平和に暮らしていることを願い祈ることとしましょう。

テーマ : 旅の思い出
ジャンル : 旅行

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