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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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連獅子

お元気ですか?

能の「石橋 狻猊(さんげい)之式」という薪能を見た。京都平安神宮で行われたもので京都の歴史と深く関係する金剛流による上演だ。この能は歌舞伎でもよく知られる連獅子の原型となった能だそうで、舞台には大きな紅白の牡丹が飾られ、白い頭の親獅子と二人の赤い頭の子獅子が登場する。普段よく見る幽玄な世界の能とは違い飛んだり跳ねたり転がったりととてもダイナミックな動きで目が離せない面白さがある。

子供の頃、叔父の家に良く行っていた。木材の加工を営む工場を経営していて大きな家だった。叔父と父は経営者という同じ仕事環境のせいか仲がよかったようで会うと二人で静かに話している姿が今も私の記憶にある。大人の男が楽しげに話す姿というのが子供心にも珍しく素敵なものに思えた。叔父と父は石を楽しむという趣味もあり時々珍しい石があると会っていたようだった。そんな石のいくつかが今も私の家にある。

叔父の家に行くと家族で泊まってくるのだが、私は従兄弟と一緒に子どもたちで布団を並べた。中庭に面した長い廊下を歩き障子を開けて普段は何に使われているのか分からない部屋に寝るのだ。私にしても従兄弟たちにしても普段とは違う異空間。昼間の遊びに疲れていても明日はなにをしようと話が弾み、「いい加減して寝なさい」と叔母に言われるまで続いた。
子供たちの臨時の寝室にそれは有った。子供の背丈より高い箪笥の上のガラスケースの中にある錦糸の重たそうな着物を着た赤い髪の人形。真っ白な顔にふさふさの髪が足元まで伸びている。夜、布団から出て一人でトイレに立つとその人形の前を通り廊下に出なければならない。怖いもの見たさで見上げるのだがすぐに目をそらして障子を開けて廊下に出、どうしてこんなお化けのような人形を飾っているのだろうと、何か叔父の家の秘密に触れたような気持ちになった。
翌日陽の光のさすその部屋に用もないのに入り込み、恐る恐る人形を見るとやはり不気味さの片鱗を残したまま同じガラスケースの中にある。実は夜見たのは夢であり昼間には人形は消えて無くなっているのではないかという私の期待を無視するかのように人形は居るのだ。一夜の宿借りの私よりよほど自分の方がこの部屋にふさわしいと言っているようだった。

何年かたちテレビで歌舞伎を見るようになり、私の頭の中では叔父の家の人形が連獅子だと分かるようにはなるのだが、それが素直に結びつかない。叔父の家の人形は私の中では夜不気味な空気を放つものでありはしゃぎ遊び疲れた子供を睨む異能の存在であった。

子供の時代が終わって何回か叔父の家に行くことがあったがあの部屋を覗くことはなかった。記憶に留まった廊下の先の寝室と人形は変わることなく今も私の中にある。
いつしか叔父の家は建て替えられ、贅沢な木材を使った綺麗な家に変わった。あの人形はどうしただろうと思わないこともないが、私にとっては記憶にある姿で充分だ。なぜなら子供だった私を異界に誘う連獅子だったのだから。

歌舞伎の連獅子を見る機会は多い。子供の成長を願うおめでたい舞台は、芸を親から子に繋ぐ歌舞伎の世界に合い観客も笑みと惜しみない拍手を送る。その気持ちは私も同じだ。ただ同時に夜の部屋で薄明かりの中見たあれにより身の震えを抑え足音を忍ばせ自分の気配を消して歩いた記憶も同時に思い出す。連獅子は私にとって記憶の扉であり、確かに異界を覗いた記憶である。

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テーマ : ひとりごとのようなもの
ジャンル : 日記

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