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杣人・somabito

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『六道遊行』

お元気ですか?

寝ている間に天候が変わり明け方近くと思える頃物凄い風と叩きつけるような雨が耳に聞こえてきた。とはいっても目を開けるわけでも時計を確認したわけでもない。そのまままた寝入ってしまった。
いつもより少し長く布団に入っているとパートナーさんの起きだす気配に目が覚める。なるほど天気予報で言っていたように昨日より気温は高いようで布団から起きだすのが苦にならない。
ゴミを捨てに行っていたパートナーさんが「西の空から晴れてきているよ」と嬉しそうに戻ってきた。「ゴミ捨て有難うね。」と言って洗面を終わらせ着替えてテレビをつけ朝食の準備をする。

という風にごく普通の日常の様子もさて文章にして書き表そうとすとなかなか難しい。その難しい事を仕事とする作家というものは大したものだと感心する。

石川淳の『六道遊行』を読んだ。古本の整理をしていて『新釈古事記』(ちくま文庫)が出てきたのをきっかけに石川淳を読んだことがなかったのがふと気になり、Book off に出かけ棚にあった一冊を買ってきたのだ。『新釈古事記』はパートナーさんの本で三浦佑之の『口語訳 古事記』と一緒に出てきたもの。これらの古事記はまた改めて読むこととしよう。実は Book off では連城三紀彦の『戻り川心中』も探したのだが、『恋文』や『隠れ菊』の下巻を見つけたものの買わずじまい。『隠れ菊』は当地を舞台にした作品だからいずれ読んで見ようと思う。

さて、石川淳であるが、文学史やフランス語の勉強の折に名前を知っていた程度で全く近づく機会を持たなかった作家である。太宰治や安部公房なども私の読本の系譜ではないからきっと石川淳もそうゆうことなのだろうと思う。だから今回読む気持ちになったのも私の知らないものを少し穴埋めしておこうという気持ちであってディック・フランシスやジョルジュ・シムノンを長年待ってようやく線路が交差したところで飛び込んだように、満を持してという訳ではない。『六道遊行』を手にとったのもその題名に興味をひかれたからで果たしてこの本を一冊目として読むのがいいのかどうかもわからない。

“六道”と聞いてなんのことやらと分からない人は Wikipedia を見ると良い。パートナーさんがすぐ「地獄とかそうゆう話でしょう」と答えたのには私の方が驚いたが、仏教で天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道という六つの世界を迷い転生する考えであるが、仏教というよりそれ以前のインド土着の宗教に由来するというほうが正しいだろう。

さて、『六道遊行』であるが、これは一つの奇書である。天平時代、藤原仲麻呂の権勢からはじまり孝謙女帝や道鏡といった歴史の流れを縦糸にしながら盗賊の小楯とその一派が働きを重ねる。しかも首領である小楯は杉の木の精である白鹿の導きを得て現代にタイム・トラベルしそこでは浦見大造という興行師と真玉という女帝が無法な騒ぎを繰り広げている。小楯は真玉に玉丸という男の子を産ませることで現代とのつながりを強めて引きあうように二つの時代を行き来するのであるが、天平では女帝の、現代では真玉の女の色と欲とに群がる男の野望のなんと虚しいこと・・・。無宿とか風と呼ばれる小楯の姿が清々しい物に見えてくる。
物語のラスト、咒法を学ぼうと志していた小楯に葛城山を目指す時が訪れた。小楯は言う「死生一條。天地の一気にあそぶのみ。地上はすでに見た。地下も生きながらのぞいた。これからは天上を見ることをねがう。山林の行者は天に通ずる。法を究めること深ければ、死して活路をひらくは天上か。盗賊の最後の大願。その法をぬすむ。おれは霊山によじて、いまだ見るに至りぬ世界にあそぶ。」と。
小楯は大杉の精・白鹿に見送られながら葛城山を目指す。

正直な処私の好みの本かといったら違うと言うだろう。だが、歴史の知識、所々に出てくるフランス語などを通じて厚みのある作家であることはすぐに伝わってくる。1983年発表の作品であるからタイム・トラベルというのも驚くほどの設定ではないが、二つの時代をまたぎながら人間の欲の世界を自由闊達な筆で描いている。その筆の自由さに感心する。
石川 淳は1899年(明治32年)生まれで1987年(昭和62年)に亡くなっているから『六道遊行』は83歳最晩年の作品なのであるが、これほど自由で大きな作品を書けるとはよほど太い人なのだろうと想像する。

さて、Amazonのコメントなどを見ると短編なども評価が高いようである。どこかで縁があったらまた手にとることになるのだろうか。その縁を知るのが私の読書の楽しみでもある。


六道遊行 (集英社文庫)六道遊行 (集英社文庫)
(1995/01/20)
石川 淳

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テーマ : 文学・小説
ジャンル : 小説・文学

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