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杣人・somabito

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『メグレと口の固い証人たち』

お元気ですか?

ジョルジュ・シムノンの『メグレと口の固い証人たち』を読みました。昨年から読み始めたシムノンですが、読むほどにその作品の魅力に惹かれていきます。

こんなお話です。
パリで老舗のビスケット会社の主人が自宅で銃殺される。庭に梯子があり窓ガラスが割られ外部から侵入者があったかに見えたが家人は銃声を聞いてなく、朝まで気付かなかったと口を閉じてしまう。この家に何があったのか・・・。

ジョルジュ・シムノンを読み始めたばかりですが、メグレのシリーズは警察官が捜査に走り回ったり、犯人との息詰まるアクションがあるわけでもありません。大抵がメグレが歩きまわる歩調と一緒に物語が展開してゆくといった感じです。犯人探しや事情を推理するための状況を読者はメグレと一緒に目にします。ではそれらを許に犯人を見つけ出せるかというとそうはいきません。読者の推理を寄せ付けないシムノンの仕掛けがあります。
『メグレと口の固い証人たち』では窓に梯子を立てかけた跡や小さな口径の拳銃など証拠と思われるものが並びますが、家人が口を閉じることから内部犯行を想像します。しかし、シムノンは内部犯行を立証する証拠を読者に見せようとはしません。それどころか事件当夜屋敷の近くに停泊していた運搬船を探したり、家を出てアパルトマン暮らしをしている次女の生活に視線を向けたりと読者を連れ回すかのようです。
シムノンは「もちろん彼はこの《捜査方法》という言葉を皮肉にいったのである。というのは、三十年前から彼は捜査方法などないとくり返しつづけてきたからだ。」と言います。長年警察に勤め、スコットランド・ヤードの刑事が彼の捜査方法を学ぼうと来るほど、タクシーの運転手が彼を乗せたことを自慢に思うほどに有名なメグレに《捜査方法》がないと言うのです。ではメグレはどうやって事件を解決するというのでしょう。もちろん幾つかの事実を組み立てて得られる隠された事実、それを想像する力はメグレの技量です。その想像力は人を深く理解する力に裏打ちされています。
今回の『メグレと口の固い証人たち』では家を出て一人暮らしをする次女ヴェロニックとその愛人との関係を知るところにメグレの理解が深く描かれています。そして事件とは直接関係のないそこにこそブルジョアの衣を纏った崩壊しつつある家族の真実を知る手がかりがあるのです。しかし、メグレはその真実に自慢気に足音立てて近づいてゆくわけではありません。逆にすこしづつ寄り添うようにして真実に近づきます。決してパズルのピースをはめるようでもなく、結論に真っ直ぐに近づくのでもありません。あくまで当事者に添うようにして真実を知ってゆくのです。そのためにメグレは苦しみ不機嫌にならざるを得ません。メグレは理不尽な世界に悲しむのです。

ジョルジュ・シムノンのメグレシリーズは確かに司法警察に勤務するメグレ警視が主人公で事件を解決するのですから推理小説なのでしょう。しかしフランス文学の伝統的心理描写を継承しながらパリと近郊に住む人々の姿を描いた優れた文学作品でもあります。11月のパリ、湿ったコートの臭い、夜の如何わしい店の灯りの臭い、没落する家庭の修理の行き届いていない部屋の臭い・・・。『メグレと口の固い証人たち』ではそうした臭いを私は楽しみました。
解説で新保博久氏が「もし面白くなかったら、どうかもう一、二冊読んでもらいたい。それでもダメだったら、数年置いてまた読み返してみるといいだろう。」と書いています。もちろん私もそうするつもりです。それと同時に、大人になってから読みだして良かったと静かに喜んでいるのです。





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