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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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『プーと私』

お元気ですか?

今日も寒い風が吹いています。当地の遥か北に連なる赤石山脈が白い景色を見せ、私は少し郷愁のようなものを感じながら車を走らせます。久しぶりに道場に向かうバイパスからは風に吹かれた海に太陽の光が銀色の輝きを見せています。家からもっと近い所に道場はいくつもあるのですが、この海の景色、みはるかす山の景色が嬉しくて私は今の道場を選んだ事を思い出していました。


石井桃子氏の『プーと私』という本を読みました。素晴らしい本です。読んでいて懐かしくホッとする自分を感じます。こうゆう楽しみをまだ私は忘れないでいたんだと心が喜んでいるのが分かります。
『プーと私』は先日近くの図書館に行った際、受付カウンターの近くに置かれた新着本の棚にありました。何冊かの本を返した帰り、ふと足を留め見つけたのですが、まだ家に読む本があったこともあってその時は借りずに帰って来たのです。ところが、やはりどうも気になってしかたありません。次回行った時にはあの棚にあるだろうか、書架にしまわれてしまったなら見つけることが出来るだろうか、誰かに借りられてしまうのではないだろうか。そんな思いが頭の中でぐるぐるしとても居心地が悪いのです。
それならと図書館のサイトを開き、検索をして見つけ、予約を入れてみました。この図書館の検索・予約システムは少々使い勝手が悪く(設計的な不備が目立つのです)図書館でそのことを伝えるのですが、受付の女性達には全く話が通じません。挙句のはてには「中央図書館には詳しい人がいますから」とまるで厄介払いのような対応をされ、私は少々むっとしていて、それをパートナーさんに言うと、“困った頑固親父・・・”といった苦笑いをされる始末です。
そんな使い勝手の悪い図書システムでとにかく本を見つけ予約を入れたので、翌々日には貸出が可能となり早速借り受けて来たのです。

この本は石井桃子さんという児童文学の作家であり翻訳家である女性が、『図書』や『文藝春秋』『学燈』などに書いてきた文章をまとめたものです。内容は大きく二部構成になっていて、一つは石井桃子さんが『くまのプーさん』を翻訳するようになった経緯や作者であるミルンのお話。また『ピーターラビット』の翻訳や作家ビアトリクス・ポターの事など石井桃子さんが翻訳したり紹介してきた児童書とその作家に関するお話です。
もう一つは、ロックフェラー財団により一年間の遊学をしたアメリカでのお話で、児童書の普及に努めてきた女性たちとの出会いや児童向け図書館の活動の様子を見て歩いた話が書かれています。
発表当時それぞれの雑誌などに紹介された短い文章も、このように一つの本にまとめて紹介されると、それはかなり確りした力となって改めて読者に届き、深く考えさせられる本として蘇ってくるのです。

誰もが子供の頃一冊や二冊お気に入りの本を持っていたことでしょう。私の場合は従兄弟の家のおもちゃ箱にあった『龍の子太郎』の絵本だったのをはっきりと覚えています。『プーと私』に紹介されている海外の児童書を子供の頃に読むことは無く中学生、高校生になってから児童文学という括りのなかで読んでいました。大抵は岩波少年文庫で読み、何冊かは英語でも読んでみるのですが『メリー・ポピンズ』を読んだ時には英語独特のリズムや英国特有のちょっとすました表現などが感じ取られ衝撃を覚えた事を今でも記憶しています。
そんな高校生のある時、英語の読解の試験問題だったのですが、ある男性がテーブルでセロリを食べる話に出会います。セロリは私の好物ですし食物の話ですからテスト問題だということを忘れてその文章を楽しく読んでいました。最後まで読むとA・A・Milne とあります。おや、ミルンってプーさんの作家じゃない。そう思った私は益々楽しくなり、どうしてもそのミルンの書いた本を読みたくなっていったのです。

西洋には自伝文学と言えるジャンルがあります。多くの作家や学者や世間に知られた仕事をしてきた人たちが仕事を引退した後やそれを控えたころになると自伝を書きます。アメリカの大統領が引退すると皆きまって回顧録を書くのはそうゆう歴史に基づいた遺伝子のなせる技なのですが、どのようなジャンルで活躍した人であれ、どうしてこの人がこのような事を思いついたのか、どうしてこんなことをするようになったのかと私達の興味を引くことは深大です。なにせ作家が想像して作り上げたお話や登場人物ではなく、実際に私達と同じ生きた人物です。これにまさるドラマは無いでしょう。

私は、そのミルンの自伝を1979年の3月に書泉グランデで見つけました。何故分かるかというと、奥付に万年筆で日付が書かれ書泉グランデのカバーがかけられているからなのですが、この本を見つけた時の風景を私は今でも覚えています。柱を囲むように作られた本棚の少し高い見上げるような棚にあったその本を私は背伸びをしてようやく届く手を伸ばして取り出し、表紙や奥付を確認してパラパラ数頁を眺めます。この本は原昌・梅沢時子お二人によって翻訳され研究社から1975年に出版されたものでした。そして「A・A・ミルンのヒューモアについて-あとがきにかえて-」という訳者による文章があって、なんとそのなかに、テストで読んだセロリの話が引用されているのです。それによると『秋にひと言』というエッセイの一節なのだそうで、私はそのエッセイをまだ読めていないのですが、少なくとも高校時代のテストの思い出と一緒にミルンの自伝は私の大切な本の一冊になっているのです。

『プーと私』を読むと、石井桃子さんもミルンの自伝を翻訳されたと書かれています。アメリカ人の詩人や英国人の手伝いを借りながら読み解く作業はとても素敵なもののようで、あぁこうゆう本の読み方は本当に楽しいだろうなと思わせます。石井さんが読んで訳したというミルンの自伝は岩波書店から出版されていて『ミルン自伝 今からでは遅すぎる』IT'S TOO LATE NOW となっています。ところが私が読んだ研究社版は『ぼくたちは幸福だった ミルン自伝』となっていて原題は単に AUTBIOGRAPHY となっているだけです。もう一冊の自伝があったのでしょうか?とても気になります。実は『プーと私』を読んでいる時から気になって、読み終わるとすぐ納戸にしまっていた『自伝』を引っ張りだしてみたくらいなのです。

確かに翻訳本を出す時に『自伝』とだけタイトルにあるのでは少し不親切に過ぎますから、訳者や編集者が話し合って“ぼくたちは幸福だった”と付けたのは理解できます。でも石井桃子さんの岩波版は IT'S TOO LATE NOW と英語のタイトルまでついています。底本が違っていて石井桃子さんが使われた方には IT'S TOO LATE NOW とあったのかもしれません。でも自伝の副題としては興味をそそる副題です。
石井桃子さんの訳した本に『くまのプーさんと魔法の森』というA・A・ミルンの息子さんが書いた本があります。著者はクリストファー・ミルン。くまのプーさんの手を引いて歩くあのおかっぱ頭の男の子、世界でもっとも有名になった男の子が書いた自伝です。この本の最後に「著者(C・ミルンの事)がしばしば引用している、A・A・ミルンの自伝『今ではおそすぎる』は、原昌、梅沢時子両氏の訳で、『ぼくたちは幸福だった』(研究社)となって、出版されていることをつけ加えておきます。」と書かれています。『くまのプーさんと魔法の森』本は1977年出版ですから、研究社版が出た2年後の文です。
石井桃子さんがミルンの自伝に興味を惹かれて読んだのは1960年代に「くまのプーさん」の合本が改定され、岩波でもそれを機に出し直そうとしたからだそうです。『プーと私』に収録されている『A・A・ミルンの自伝を読む』という文章は『石井桃子集7』1999年岩波書店に納められているのですが、『自伝』の読み込みが実際のところいつまでやられていたのか、出版に至る経緯はどうだったのかは分かりません。Amazonを見ると石井桃子訳の『ミルン自伝 今からでは遅すぎる』は2003年に出版されているようです。随分と時間がたっていますから様々な事情があったのかもしれません。
ですが、今私は静かにこの石井桃子版を手に入れ、読んで見たいと思っています。それは私のノスタルジックな思いからなのではなく、少しばかりミルンや石井桃子さんへのお礼の気持ちと言ったほうがより正確なような気がしているのです。

プーと私プーと私
(2014/01/21)
石井 桃子

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C・ミルンの自伝『クマのプーさんと魔法の森』The Enchanted Places ははからずも世界でもっとも有名になってしまった男の子が、作家で父親であったA・A・ミルンとの事を書いた本なのですが、C・ミルンにはもう一冊『クリストファー・ロビンの本屋』という素晴らしい本があります。小田島芳子さんの訳による晶文社から出されているこの本はあの可愛い男の子が戦争を経て大人になりどんな生き方を選んだかが書かれている深い感動の自伝です。クマのプーさんのお話は素晴らしい児童書です。でも、もしプーさんを読む子どもたちが少し大人になった時に、クリストファーの書いた二冊を読むとしたら全く違った世界を知ることになるでしょう。


クリストファー・ロビンの本屋クリストファー・ロビンの本屋
(1983/12)
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