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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
Nuages・・・雲のようにふんわりとしています

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老いの傍で・・・その3

お元気ですか?

朝、食事を終えて谷川俊太郎の本を読んでいるとベランダの庇の上で雀が喉から声を絞り出すように鳴いている。誰かに何かを伝えたいのだろか、それはもう必死なように聴こえる。家のむこう、ここからは見えない木々からなのだろう蝉が鳴いている。蝉の寿命が地上に出てから1週間というのが嘘だというのを最近知った。1か月ぐらいは生きるのだそうだ。だとするとそれはそれで酷く悲しい事のように思う。1か月も必死に鳴き続けなければいけないのだから。命をつなぐためだけに必死に鳴き続けなければならないのだから。


週末は本を読んだり映画をみたりしながらのんびりと過ごします。時にはパートナーさんと買い物にも出かけたりしますが、素敵な洋服を買ったり憧れていた食器を買ったりということはもうすっかりなくなっていますので、うきうきとかどきどきといったものではありません。それでもたまに頂き物などで思いがけないものが我が家に届いたりしますと、ちょっと愉快になって二人で「今日はパーティーだね」なんて言いながら食事のしたくをするのです。先日も証券会社から金沢の金箔入のお酒と酒器が届き、金沢の町をあちこち歩きながら楽しんだ事を思い出したりしていました。そんな細やかな事が幸せに感じられます。

函館で過ごした3ヶ月間は私にとってとても楽しい充実したものでした。父のベッドの傍で交わす話は驚くほどに新鮮な感覚を私に与えてくれます。私の場合特に父と一緒に暮らす時間がありませんでしたからこの時とばかりに色々な事を聞き出しては私の知らない話を補うのです。これがもし事故や急病で倒れたり亡くなったりして会話も出来なかったとしたらどうでしょう。家族としての喪失感は計り知れないものがあるのではないでしょうか。その点、病床にいるとは言え記憶がしっかりしていて会話にも不自由のない父にはまるで私の為に最後の命を保っているのではないかと思うほどで、とても感謝するのです。ですからせめてもの事と思い、美味しいものを作ったりカステラを買ったりして病床に運ぶのですが、私に出来ることはそのくらいです。しかしそんな私に父は帰りがけ必ず「有難う」と言い「気をつけて」と気遣うのです。

『ALWAYS 続・三丁目の夕日』では鈴木オートの奥さんが子どもたちと出かけた先で偶然戦前お付き合いのあった男性と出会います。男性はシベリアに抑留されていたのですが、二人は戦争が運命を変えたことを受け入れて静かです。
私の父もシベリアに抑留されていました。4年を経て昭和24年7月31日に復員船興安丸で舞鶴に帰ってきます。子供の頃父は戦争の話やシベリアの話を一切しませんでした。私達家族もそこに触れることはしません。しかし父がそれらの思いを封じていたのかというとそうではありませんでした。ある時平成になってからの事ですが、父が満州で一緒だった人の家族が開拓農家として北海道にいらして、私の運転する車でその家を訪ねた事があります。父が一人のたまたま満州で出会った人の為にそのご家族に会いに行くという強い気持ちを持っていたことを私はその時初めて知ったのです。老いたその家のご婦人は一枚の白黒写真をテーブルに出し消息を訊ねます。そのご婦人もまた父と同じように重い記憶を抱いて生きているのでしょう。
私にとって父が戦争に行き、シベリアに抑留されていたというのは大変大きな事です。もし私に同じ事が起こっていたらと想像すると恐怖に気がおかしくなるのではと思うくらいで、そのような経験をした父が目の前にいるという事は私とは全く次元の違う存在として父を考えなければなりません。何の罪もないのに他国によって拘束され自由を奪われ過酷な労働を強いられる、そして次々と仲間が亡くなってゆく。父の経験してきた事を思えば、私が経験する事の全てがあまりにも普通で小さな事のように感じられます。私がこれまで何度も父の命を思うことで自分の生きる勇気を絞りだして来たのはそうゆう分けなのです。

私達人間も蝉や雀と同じように鳴き続けなければなりません。生まれてきた瞬間から泣き出し一生泣き続けて生をつないでゆきます。この世の何を見て泣いているのか。私はそれを何時も思っています。そして私の見たものの一つに父があったことをとても意味深く感謝しながら思うのです。
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コメント

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No title

こんばんは。ご無沙汰しております。

お帰りなさいませ。
お疲れはすっかり癒えましたでしょうか。

このたびのお父上さまのお話、お言葉が、本当にしみじみと心に届いてまいりました。
ありがとうございました。
是非、御礼申し上げたくなりました。

それから、蝉のお話、私も存じませんでした。

Re: No title

ここ様、コメント有難うございます。
西日本には雨のニュースが続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
父に限らずあの時代を生きた人の姿に畏敬するのですが、肚のくくりかた覚悟のしかたに私などとは絶対的違いがあるようです。追いつきたくともとてもかないません。

今日も庭の向こうで蝉が鳴いています。

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