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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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『海うそ』

お元気ですか?

梨木香歩さんの『海うそ』を読みました。カバーの折り返しに創業百年記念文芸と書かれていますので、岩波書店の企画の一つなのだと思い、岩波のサイトを訪れてみると高橋源一郎、平田オリザ、谷川俊太郎と私にも馴染みの方の作品が顔写真とともに紹介されています。おや、これはと思いながらスクロールしてゆくとやっぱり・・・と思わず笑ってしまいました。梨木さんの紹介には丸囲みの中にリスの写真。作品のイメージに影響するのを嫌ってか梨木さんの姿は見ることが極めて難しいのです。確かかなり以前、雑誌に載ったことが一度あったように記憶していますがその雑誌すら私はしっかりとは見ていません。

『海うそ』はこんな話。人文地理学者の秋野は南九州の離島遅島を調査目的で訪ねる。修験道の霊山があった遅島は豊かな自然と平家の落人の歴史を抱え様々な言い伝えをもつ島で、秋野は住民の話や山歩きの案内の青年との出会いを通じて島の文化の深さに触れてゆく。

作品の中には沢山の草花や鳥が出てきます。島の岬や山中の祠を訪ねながら歴史を掘り起こす研究だから自然描写は欠かせないのですが、残念なことに私には素養が無くきっと野山の草花、樹木、鳥や動物の生態に知識があればこの作品はもっと読者に迫るものがあるのだろうと感じながら読み進みます。
主人公の学者秋野は亡くなった研究室の教授の調査を引き継ぐ形で島を訪れています。そして彼自身も許嫁や両親を亡くした悲しみを抱えているのですが、遅島にはあちらこちらに廃仏毀釈の残骸や修験道にまつわる言い伝えが残っています。これらの伝承や遺構は彼にどんな変化をもたらすのでしょう。

『ピスタチオ』で梨木さんは死者には物語が必要だと言います。死んでから始まる「何か」、別の次元の「つきあい」があると言います。『ピスタチオ』では呪術師を通じて知らされる精霊に導かれるように、死者との対話が始まります。それは想像する力であり思いを寄せる作業だと言えます。『海うそ』では伝承や朽ちた遺跡を見つけ出して死者に思いを寄せます。
秋野は身近な人の死を抱えて遅島を訪れていますが、その遅島で死者との向き合い方を見つけているのでしょう。
私たちは常に死者と死者の間に生きています。子どもの頃仏壇の無い私の家で母は祖父母の写真を箪笥の上に飾り事あるたびにお供え物をしていました。少し背伸びをしてご飯やお菓子を置くのは私の役目です。父は両親の思い出や戦争で亡くなった兄弟の話をしてくれます。そうゆうことを通じて私は死者とともにあることを身につけてゆきました。小学校に上がる頃、母の両親が亡くなります。兄妹が交代で見舞い、世話をするのに小さい私たちはついて行きます。死への準備を幼いながらに知るのです。死は死者のものではなく生きている者、残される者たちのものだということを学ぶのです。

物語では50年後にリゾート開発の進む遅島を再訪した秋野が開発に携わる息子を相手に島の事を述懐します。海うそと呼ばれる蜃気楼を見て、「風が走り紫外線が乱反射して、海も山もきらめいている。照葉樹林の樹冠の波の、この眩しさ。けれどこれもまた、幻。だが幻は、森羅万象に宿り、森羅万象は幻に支えられてきらめくのだった。」と秋野は悟ります。
生者が死者を思い寄り添うとき、物語が生まれます。物語は生と死とを一体とし昇華させてゆくのだと言ってよいでしょう。
死者の物語を語るのは生者の務めなのかも知れません。


海うそ海うそ
(2014/04/10)
梨木 香歩

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