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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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カレーライス

お元気ですか?

『アンソロジー カレーライス!!』PARCO出版という本を読みました。先に『アンソロジー おやつ』を読んで子供の頃の記憶を思い出したのに気をよくしたからなのです。
目次をみると、池波正太郎を先頭に、井上靖、小津安二郎、獅子文六と『おやつ』に比べると少し年輩の方の名前が多いように思えるのはカレーライスが戦前から気取らない食べ物として親しまれていたからなのかも知れません。本書に収められた文章のどれもが、ノスタルジックな想いとともに構えることもなく照れくさそうな気持ちを含みながら書かれているように見えます。阿川弘之と阿川佐和子の名前があり、今回も親子で登場だなと思ったら、よしもとばななと吉本隆明の名前もありました。カレーは親子で楽しめる料理なのでしょう。


子供の頃、ラーメン屋やデパートの上の食堂には必ずカレーライスの品書きが下がっていて、食堂はまだしもラーメン屋にカレーライスがあるのが不思議だった。もっとも食堂もラーメン屋もめったに入るところではなかったから何故ラーメン屋にカレーライスがあるのかを探求する機会を逸してしまったままこの歳になっている。つまりラーメン屋でカレーライスを注文したことは一度もないのだ。
カレーライスは家で母が作るのを食べるのがもっぱらで、外で食べたのは高校生になって繁華街にある洋食屋で食べたのを今思い出した。焦げ茶色の濃いカレーとガラスのコップに出された水が今私の脳に映像となって蘇っているが、味は思い出せない。
子供の頃の私はお腹が弱くあまり沢山食べることが出来なかったが、カレーは違った。いつも必ずおかわりを頼みそして次の日お腹がいたくて泣きそうな顔をしながら、またやっちゃたと胃薬を飲むのだった。後悔の気持ちは一切なく母も「またおなか壊すよ」と言いながらおかわりを軽めによそうのだった。
ある日、叔母が家に遊びに来ていて、今晩はカレーだと言う。ところが鍋を二つ用意して子供用と大人用と違えて作ると聞いて驚いた。私と同じ年頃のその家の子供が不憫に思われた。カレーの美味さは大人と同じ辛いカレーをふうふう言いながら食べるところにある。子供用に甘く作られたカレーなんて子供が背伸びする権利を奪うようなもので人権侵害もはなはだしい。この時は心から家の子でよかったと思った。カレーに限らず、母は大人用子供用と分けて作ることをせず、しかも酒飲みのおかずのようなものが好きだったから、私は子供の頃から大人の口で育ったのだった。

カレーライスの思い出は本屋の記憶と重なっている。高校生になると一人連絡船と寝台車を乗り継いで東京に出て遊んだ。神保町の古本屋を何軒もはしごするのだが、すずらん通りのキッチン南海に入ったのはそんな頃、入り口の横に腰高に立てられた看板に引き寄せられてだった。最初に食べたのはカツカレーで以降キッチン南海では決まってカツカレーである。忙しく出てくる皿にカレーがたっぷり盛られているのが嬉しかった。丸善のカフェでもカレーを食べたし、高島屋の上に美味しいカレーがあると聞き行ったこともあった。新宿の紀伊国屋書店に行けば地下のカウンターでカレーを食べたり、ゆっくりしたい時や連れがあったときは中村屋に渡った。テーブルにつきカレーを頼み待っている間に袋から本を出し、表紙をめくっているうちにすぐカレーはくるので、汚れないようにと席の横に仕舞うのだが、目当ての本を得た満足感がカレーの味を美味くしたようにも思う。
そんな遊びからもずいぶん遠くなった。

イギリス風カレー、インドやスリランカのカレーと違いが知られるようになったのは最近の事で、カレー粉とバター、小麦粉、たまねぎを炒めて一般家庭で作られるようになったのだって戦後の事だろう。メーカーの板チョコ型のカレールーは一気にカレーを家庭料理の花形にした。以来、カレーは和食でも洋食でもない一種独特の日本食としての地位を獲得した。今では男の手料理の一位二位を争っている。
しかし、私はカレーを作らない。一人暮らしのとき、カレーが食べたくなってハインツのカレー缶を買ってきて鍋で暖めて食べた事はあるが、我が家ではパートナーさんが美味しいカレーを作ってくれるので私はそれを楽しんでいる。

函館には明治時代から続く五島軒というレストランがある。ここのカレーはレトルトにもなって函館土産としても人気だ。
その五島軒のカレーに確かロイヤルカレーと言ったと思うのだが、鴨の肉の入った鴨カレーがある。五島軒のサイトを見ても見当たらないので止めたのかも知れない。何百円かお値段は高いが鴨の甘い脂が美味しいカレーになって私は好んでいたのだが、ある時会議で函館を訪れた際、職場の仲間を連れて食べに行ったことがあった。
ところが、自慢げに紹介した鴨カレーは以前食べた味と違いまったくコクや旨みがうすく期待はずれなもので、仲間は美味しいと言ってくれるが、私は悔しさでシェフに文句を言う気力もなかった。
その後、しばらくして東京の事務所でランチパーティーを開く機会があり、オードブルや軽いつまみを用意することになったが、腹持ちのするものも必要になり、汚名挽回とばかりに私が鴨カレーを作ることにした。
食肉関係の仕事をしている人間のつてで、鳥肉の専門卸会社に連絡をし、鴨肉とスープ用の鴨のガラを届けさせ、スープをとった。野菜も気をつけて強い香味野菜は避け、ジャガイモもあまり煮込んでとろみが強くつかないようにする。ご飯はいつも行く飲み屋に頼み業務用の炊飯釜で炊いてもらった。こうして作った鴨カレーは我ながら満足のゆくもの、おかわりを言う仲間に晴れがましい思いだった。
それ以来私はカレーライスを作っていない。

ところで、阿川弘之の若い頃の作品に『カレーライスの唄』というのがある。戦後の昭和30年代若い男女の交際とカレーライスの店を開くという話だが、爽やかな良い話である。たぶんそうだと思うのだが、この『カレーライスの唄』を原作にしてNHKはドラマを作ったのではないかと思う。当時、まだ白黒のスタジオ撮影の時代である。テレビで見て、子供の私は東京の街、若い男女が一生懸命にカレーライスの店を開くために奔走する姿に明るい気持ちになった事を覚えている。そしてその気持ちはいつしか神保町につながっていった。
一人上京し好きな本を読み、辛いカツカレーを食べ、私は大人になる準備をしていたのだった。

アンソロジー カレーライス!!アンソロジー カレーライス!!
(2013/02/28)
阿川佐和子、阿川弘之 他

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