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杣人・somabito

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『雪と珊瑚と』 梨木香歩

お元気ですか?

『哲学と子ども』と一緒に借りた梨木香歩さんの『雪と珊瑚と』を読みました。小説 野生時代に2010年9月から2012年1月まで連載された小説です。

こんなお話です。二十一歳になる珊瑚は雪という赤ちゃんと暮すシングルマザー。働くために子どもを預けなければならないが、ふと曲がった道に「赤ちゃん、お預かりします」と張り紙の出た一軒家を見つけ、その仄かな温かさにひかれて呼び鈴を押します。三和土(たたき)の玄関のある女主は藪内くららと名乗り、自然な距離感で珊瑚と雪の親子と接します。珊瑚はくららのところに雪を預け、以前働いていたパン屋さんで勤めることになりますが、パン屋さんも事情があるようで店を閉めニュージーランドに移住すると言います。珊瑚はパン屋さんで親しくなったな由岐さんやくららの甥で無農薬野菜をつくる貴行たちの助けを借りながらお惣菜カフェを始めます。

珊瑚は自分の母親からネグレクトを受け、子どもの頃から愛情も食事もない生活をし、高校も中退せざるを得ないという経験を持っています。珊瑚の視点が客観的で距離感をもって描かれているのは自分で自分を守る厳しさが性格に染み付いているからなのでしょう。その距離感は同時に相手の事情を斟酌し認める懐の深さでもあります。パン屋の同僚であからさまに珊瑚を嫌う美知恵の態度に心を曇らせながらも距離感で対処します。生来の頭の良さというのも在るのかも知れません。少し考えすぎていないかと思わないわけでもありません。美知恵にはそんな珊瑚の姿が計算だかい偽善者と映るようです。嫌われる程度ならまだいいのでしょうが、直接的攻撃を受けた場合、珊瑚はどうゆう対処をするのだろうと考えてしまいます。

一方、くららはちょっと世間離れした空気をかもしています。修道院で働き世界中で援助活動をした経験がある事、お祖母さんが信仰していたアッシジの聖フランシスコの教えを体現化したような女性から名前が付けられていることなどが分かりますが、料理の得意なちょっと謎の女性です。梨木香歩さんのファンにはきっと『西の魔女が死んだ』のお婆さんのイメージが浮かんで来ることでしょう。珊瑚との会話で詩人の石原吉郎という名前が出てきた時に、「くららの顔が真顔になった」とあり、何か物語りに関係してくるのかと思いますが、その後石原吉郎は珊瑚が「望郷の海」の一節を小さくつぶやく程度にしか出てきません。こうゆう読者に謎を持たせそのままにするのは梨木香歩さんの物語にはあることです。

さて、物語を読むと思わぬところで嬉しくなることがあります。今回は「外の木の梢で、ピーポピーと、イカルがおもちゃの楽隊の笛のようにのんびり鳴いている。」という情景。実は先日クロスワードパズルをやっていてどうしても分からなかったのがイカルという鳥の名前でした。もともと動物に関しては興味の薄い私で鳥の名前もさっぱりです。カヤックで湖を渡り森林を歩く梨木香歩さんにまた教えられます。そうか、イカルっていう鳥は人の近くにも棲んでピーポピーって鳴くんだとつい最近苦労したクロスワードパズルを思いだすのです。

もう一つは石原吉郎でした。私は知らない詩人なのですが、こうして梨木香歩さんの本に登場すると興味を持ちます。ウィキペディアで調べてみると、大正四年に伊豆の土肥村に生まれ、東京外国語大学を卒業した後ハルビンに渡り終戦に伴いシベリアに抑留されます。戦後も軍法会議にかけられ重労働の判決を受け森林伐採をさせられたりし、昭和二十八年になってようやく帰国します。その後シベリア体験をもとにした詩などを発表し詩人として活躍します。『雪と珊瑚と』で・・・弦にかえる矢があってはならぬ。おそらく私たちはそのようにして断ち切られ、放たれたはずであった・・・と珊瑚が呟く詩集「望郷の海」は昭和四十八年、第11回藤村記念歴程賞を受賞しています。
本を読んで嬉しいのはこうゆう新しい知識興味に出会うときです。伊豆の土肥は時々遊びに行くところですし、シベリア抑留は父の体験と重なるものです。すぐ父の書いた本を読み返してみましたが、収容されていた場所は違うようです。それでも五月に函館に行く予定なので父の書棚に石原吉郎の本がないか探してみようと思います。

今回も楽しむ事の出来た梨木香歩さんの本。読みながらパートナーさんに「スペインオムレツ作ろうか」と言ってしまう私。美味しいものもいっぱい出てくる本です。

ではまた。

雪と珊瑚と雪と珊瑚と
(2012/04/28)
梨木 香歩

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