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杣人・somabito

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『時をさまようタック』ナタリー・バビット

お元気ですか?

先に読んだ『哲学と子ども』の中に、子どもが死をどのように理解するかを考察した章がありました。そこで紹介されていた本が『時をさまようタック』ナタリー・バビット著です。未読の本でしたので図書館で借りて読んでみました。

こんなお話です。トゥリーギャップ村に古くから続く家に暮すウィニー・フォスターは十歳の女の子で、家のフェンスのなかでヒキガエル相手に話しかけ、私だけの何かがしたい、家出をして名前を変えて・・・と空想しています。一人っ子のウィニーはおばあさんやお母さんに何時も見守られていることに息苦しさを感じているのです。そんな八月の第一週のある日、朝早く家を出たウィニーは森の中の巨大な木の根もとにある泉で水を飲む少年に出会います。私も飲みたいというウィニーに少年はおそろしいことになるから飲んではだめだと言い、ウィニーは現れた少年のお母さんメイ・タックとお兄さんのマイルズ、そして少年ジェシィによって連れ去られてしまいます。沼のほとりに建つ小屋に住むタック家は八十七年の前旅の途中、森の泉の水を飲み不老不死になったという秘密をウィニーに話しますが、信じることが出来ません。メイの夫アンガス・タックから生命は成長し変化するもので、死ぬことも生まれたときに約束された車輪の一部なんだと言い、その車輪の一部から外れてしまった自分たちは石ころみたいなもので、生きているとはいえないとウィニーに教えます。
児童文学には死について取り上げた話が多くあります。私が子供の頃に大好きだった『龍の子太郎』もその一つですし、幽霊の姿で主人公の前に登場して友達になる作品も多くあります。ですが、この本のように生命について不老不死の人間に語らせる児童書は非常に珍しいものです。しかもこのように成功している例を私は知りません。他にもあるなら是非教えていただきたいと思います。
不死の姿を最もわかりやすく表現した文学作品は吸血鬼ドラキュラでしょう。最近はそのドラキュラにしても麻薬中毒や血液の病気をもった人間が多くなったためうかうか血も吸えない状況です。話がドラキュラに脱線するのは避けるとしても、子どもの持つ興味に死を真正面から用意し、死と生命を同じ視点から説明する『時をさまようタック』は素晴らしい本といえます。

久しぶりに児童書を読んで、私はあらためて児童文学の素晴らしさを思います。船に乗って宝島を目指さなくても、箪笥やウサギの穴を抜けて違う国に行かなくても主人公の子どもたちは冒険に出会います。日常の中にある小さな不満や不安、そして好奇心が子どもたちを思いもかけない冒険に連れ出してゆくのです。異世界の出来事で子どもたちは事件に遭遇し悲しくなったり勇気を出して進んだりしますが、大切なのは孤独になり自分のいた世界の親や友達の事を思い出すことです。多くの作品で子どもたちは異世界や巻き込まれた事件などでさまざまな冒険を通じて成長し、現実に戻ってからもその経験を自分の中での宝物としてゆきます。読者は、大抵は主人公と同世代の子どもたちですが、ヒキガエル相手に話したり大人に不満をもつ主人公と一緒に物語の世界を経験して自分の世界に戻ってきます。

では大人はどうでしょう。実は子どもと同じです。大人も社会や周りの大人に不満を持ち不安を感じていますし、主人公と一緒に物語の中で冒険し考えます。そして現実の自分の世界に戻って周りを見回します。すこし違うといえばヒキガエルに話しかけたりしないことでしょうか。
『時をさまようタック』は死と生命について考えるきっかけを示す児童書です。ウィニーはやがて歳をとり死にますしタック家の人たちは生き続けます。どちらの立場にたっても人生を楽しみ希望をもつ事は出来ますし、苦悩し孤独を感じる日常があります。子どもたちはゆっくり考えてゆけばいいでしょう。大人はもう少し真剣に考えなければならないかもしれません。
私は終末期にある父を見て幸せな人生であったことを喜んでいますが、自分の事では大いに反省するところがあって苦い思いを抱えて生きています。もし不老不死だったら深い孤独を抱えながらもやり直しの人生が可能になることに喜ぶかもしれません。

死ぬ事の出来ないタック家の人々を通じて生きることを深く考えさせる『時をさまようタック』。大人になってから読んでもその素晴らしさはしっかりと伝わってくる本でした。


時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋)時をさまようタック (児童図書館・文学の部屋)
(1989/12)
ナタリー バビット

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