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杣人・somabito

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『鳥と雲と薬草袋』 梨木香歩

お元気ですか?

連休も近い今日は昭和の日。以前は昭和天皇誕生日だったのがみどりの日になり、今みどりの日は五月四日に移り連休の穴埋めになっている。最近では祝日に日の丸の旗を掲げる家も少なくなった。

梨木香歩さんの『鳥と雲と薬草袋』を読みました。西日本新聞に2011年12月13日から2012年2月28日の間掲載された土地の名前をテーマにしたエッセイです。福岡市に本社を置く西日本新聞での掲載ですから登場する土地も九州と西日本が多いのですが、それでも私にも馴染みのある地名が取り上げられていると少し顔を緩めながら読んでしまいます。たとえば「文字に倚り掛かからない地名」という章に、姶良という鹿児島の地名が出てきます。私はたまたま地名を知っていたのですが、梨木さんは姶の字を「現代社会では他にほとんどみかけないのではないか。」と言い「ア・イ・ラ。発声すると響きに野趣があり力強い。」と評します。「消えた地名」の章では福井県の武生が紫式部が住んだ事のある所であり、宇治拾遺物語にも出てくる古い街道が武生から日本海まで続いている地であると伝え、2005年に今立町と合併して越前市になった事を寂しく紹介します。私も越前市より武生の方が分かりやすいですし梨木さんも食べたであろう辛味大根を使った名物のおろし蕎麦も思い出します。「温かな地名」では小雀というタイトルで三鷹市下連雀が紹介されています。鷹と雀とあるので「鳥好きの私には嬉しい地名だ。」と言われると私の方こそとお礼を言いたくなります。ちなみに連雀は連尺とも書き、行商人の背負子のことで、青梅街道を使い江戸と行き来した行商人の姿は住民に群れ飛ぶ雀の姿に似て映ったのでしょうか。

このように日本各地の地名から歴史や風物が見られるのはそこに住む人々が名前を付けたからに他なりません。
「新しく生まれた地名」では「四国中央市だなんて乱暴さは、いかにも平成の大合併で出来た名前らしい」と感じ、この地には宇摩という709年にすでに記録に出ている古い地名があり新市名の公募でも一位だったにもかかわらず行政の判断で四国中央市と決まったそうで、住民と行政の意識の差に疑問を呈します。山梨の南アルプス市についても「最初はぎょっとした」と言い「だがアルプスという名自体がヨーロッパの有名な山岳地帯の借り物なのだ。視線が山にしか行っていないような、人ごとのような響きだ。」と厳しい。

平成の大合併で出来た市や町は全国にどれほどあるのだろう。行政の都合はあるにしても、それによって人々の歴史がしみこんだ名前が捨てられてゆくのは寂しい。函館の北西に広がる地域も合併によって北斗市となった所です。故郷から離れて暮す私が言うのも申し訳ない気がしますが、もともとは上磯と亀田と呼ばれていた地域で、北斗なんて全く誰が考えたのだろう。斗はひしゃくの事、北斗星は相応しいと思いますが上磯にも亀田にもひしゃくを思い起こさせるものはない。北海道新幹線の函館の駅の名称をめぐって北斗市と函館市は激しく対立しました。駅の場所は北斗市にあり北斗市は当然のように北斗駅と名乗りたい。函館は歴史ある観光地として新幹線の駅に函館の名前を入れたい。その対立は両市の話し合いでは決着がつかず知事も調整に入るほどでしたが、結局はJRの判断で「新函館北斗駅」と決まりました。確かに北斗駅と言われても本州の人はもちろん道内の人だってぴんとこないでしょう。500年以上遡ることの出来る函館の名前と地域の名前を消して9年前に新たに付けた名前では人々へ伝わる重みが違います。しかし函館も喜んではいられません。産業の衰退と人口減少を理由に消え逝く町にリストアップされているのですから。

オホーツクの海に面したサロマ湖の北に湧別と言う町があります。鉄道が走っていたころは名寄本線が湧別まで伸び終着駅の町でした。湧別には湧別川という小さな川が流れているのですが、アイヌの人たちがチョウザメの遡上する川という意味で湧別と名づけた土地なのです。私の父は湧別と非常に深い関係をもっていました。その父は若いころ満州の興農合作社で働き三メートルを越えるチョウザメと一緒に写真に写ったりもしていて思い出を大切にしていました。父がチョウザメの遡上する川という意味の湧別とも縁があったのは嬉しい偶然です。そうゆうことが分かるのも土地の名前が残っているからに他なりません。今ではとてもチョウザメが遡上するとは思えない湧別ですが、この名前のおかげでアイヌの人たちの暮らしぶりも鮮やかに私たちに伝わってくるようです。

土地の名前というのは人々の暮らしや自然、歴史を熟成させながらその土地に根をはってゆきます。行政の都合で軽々しく名前を変えるとその土地のもつ力が失われてしまうような気がしますが、皆様はどうお感じでしょうか。


鳥と雲と薬草袋鳥と雲と薬草袋
(2013/03)
梨木 香歩

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