プロフィール

杣人・somabito

Author:杣人・somabito
Nuages・・・雲のようにふんわりとしています

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
リンク
ブログランキング

FC2ブログランキング

人気のあれこれ!
月別アーカイブ
最近のトラックバック

『ある小さなスズメの記録』 クレア・キップス

お元気ですか?

先に図書館から借りた梨木香歩さんの『鳥と雲と薬草袋』の中にスズメの話を翻訳したと短く書いてありました。それが今日のタイトル、偶然一緒に借りた『ある小さなスズメの記録』という本です。
解説や訳者あとがきをいれても150頁ほどの薄い本ですが、確りした箱に上製本、箔押しとまではいきませんが、金色文字で背表紙に日本語のタイトル、表紙に原題の Sold for a Farthing と書かれています。出版社文藝春秋の本書に対する敬意のようなものが感じられる装丁です。
箱から取り出し、表紙を開くと見返しに赤い帯が貼られています。この本に関しては一言も逃さないぞといった図書館の人の思いが感じられます。帯には「あの幻の名作が、よみがえる」「第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく。ヨーロッパやアメリカで空前の大ベストセラーとなった英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリーを、梨木香歩が完訳。」と書かれています。

こんなお話です。1940年7月、キップス婦人は玄関前でおそらく数時間前に生まれたばかりであろう瀕死の状態の小鳥を見つけ生き返らせようと努めます。マッチ棒で口を開けミルクを垂らして飲ませ体を温めます。元気になったら外に放してやるつもりだった小スズメですが、右の羽と左足に障碍があるのが分かったため婦人は自らの手で育てることを決め部屋の中で飼うことにします。小スズメは婦人の頭を歩いてヘアピンを抜いたり、ベッドで一緒に寝たりしすっかり懐き、婦人の弾くピアノと一緒に歌を歌ったりもします。こうして戦中戦後を通じて十二年に及ぶ小スズメと婦人の交流が始まります。

読み始めてしばらくして、私はおやこの話はどこかで聞いたことがあるぞと思いました。本を読んだ記憶はありませんから、何かの本か雑誌に紹介されていたのを読んだことがあったのかも知れません。ですが生き物を飼うことが苦手な私はきっと特に興味を持つこともなかったのでしょう。
今回そうとは知らず、梨木香歩さんの訳ということで読み始めた本でしたが、私には別の興味もあったのです。イギリスの文学作品の中に第二次世界大戦を時代背景としたものがあります。児童文学では『ナルニア国物語』はその代表的例なのですが、ドイツ軍によるロンドン空襲や、戦時中の物資の調達が困難な生活の様子なども多くの作品に描かれています。アメリカからの救援物資がイギリスに送られ配給されますが、そんな物資の中に乾燥卵があったことを私が知ったのも何かの作品でした。そういった作品はもちろん戦争で人々が恐怖や困窮を経験する様子が書かれているのですが、イギリスの作品に関してはどこか現実との距離感があって少し醒めたものを感じます。イギリス人独特のユーモアやアイロニーといった気質が自分たちがお芝居かなにか作り物の中にいるように見立てさせるのでしょう。ノスタルジーと言えば綺麗に聞こえて語弊があるかもしれません。ですが大英帝国の国土で国民が辛苦を経験するとき、プライドとあいまって化学変化を起こしているのは間違いのない事実です。そしてそれらが文学に表現されたとき、独特の美しいさをもって作品に昇華されているのです。

『ある小さなスズメの記録』では距離感をもった客観的視点と抑制された文章とによってかえって小スズメとキップス婦人との交歓を深く温かいものとして伝えています。ペットと呼ぶよりまさに友人・戦友として生きた小スズメとの記録です。鳥の生態に興味がない人でも思い出して読み返したくなる本でしょう。

おまけの話)

梨木香歩さんによるとこの本に登場するスズメはイエスズメ(ハウス・スパロー)と言い日本で一般的な雀(ツリー・スパロー)とは違う種なのだそうです。でも日本の雀も人里に住み私たちの生活には馴染みの深い鳥です。去年私が函館の家で過ごしていたとき、雀が父の部屋の使われていない換気扇のフードの中に巣をつくり卵を産みました。私が庭の草取りをしていると木の枝にとまりながら巣に近づいていいのかどうか私の様子をうかがっているのが分かります。声をかけたくなる気もしますが、気づかない振りをしているのもいいだろうと背中をむけるようにしたり下を向いたりしていると、枝を運び入れています。一ヶ月ほどすると巣が賑やかになりました。子雀が生まれたのです。もともとが換気扇のフードですからちゃんと外に出られるかどうか心配しましたが、どうやら親鳥が器用に出入りを教えたようです。そのうちに電線に親子で並ぶ姿が見られるようになりました。庭の手入れなどでこの親子に遭遇しましたが、無事育って安心したのでしょうか、親鳥が「あの人は大丈夫だよ」と子どもに言っているように見えます。私が函館にいる間換気扇の巣を使っているようでしたがその後はどうなったでしょうか。今週函館に行きますので様子が分かればと思います。

おまけの話2)

『ある小さなスズメの記録』は原題を Sold for a Farthing といいます。辞書を引くと Farthing とは英国の通過の単位で4分の1ペニーに相当する最小額貨幣で1961年に廃止されたとあります。なにか慣用句なのでしょうか?Oxfordの英英辞典も見てみましたが分かりません。どなたか教えていただけたら嬉しいのですが・・・。



『ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』
クレア・キップス著  梨木 香歩訳
スポンサーサイト

コメント

Secret

杣人のNuages

ブログ内検索
 RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ホテル探しに!
クリックをお願いします!
Google