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杣人・somabito

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『記憶のための殺人』ディディエ・デナンクス

お元気ですか?

いつも参考にさせていただいている「探偵小説三昧」さん。今回もおもわずうなってしまう本をご紹介いただきました。ディディエ・デナンクスの『記憶のための殺人』です。訳者あとがきによるとデナンクスは1945年にパリ北部のサン=ドニという労働者の町で生まれ印刷工を経て作家になったといいます。両親はアルジェリア戦争反対の運動に参加し、祖父の一人は第一次世界大戦中に脱走するアナーキスト、もう一人はボルシェビィキで共産党員として市長を務める人だったといいますからから子供のころから政治意識の深い家庭環境で育ったことは想像できます。

小説は1961年10月17日パリで大規模なアルジェリア人によるデモが行われる場面から始まる。高校で歴史を教える教師ロジェ・ティロは身重の妻の待つ自宅に帰る途中デモに遭遇し家の前でその様子を見ているところを何者かに拳銃で殺される。そして20年後、ティロの息子ベルナールは恋人とスペインへ向かう旅行の途中トゥールーズに立ち寄り公文書館で調べものをするがその直後やはり何者かに射殺される。ベルナールの事件を調べる刑事カダンは20年前の父親ロジェ殺害に関連性を感じやがて捜査はフランスの隠された歴史に触れてゆく。

読んでいるうちにこれは良い本だという感触が体の中でざわざわとしてくる。史実をもとにした小説には作者による視点によってそれまであまり知られていなかった事が浮き出してくる作品がありそれが作品の力になる。時には一人の作者によって掘り起こされた史実が他の作家にも取り上げられブームのようにさえなることもあり『記憶のための殺人』は正にそういった力を持った作品でディディエ・デナンクスの方向を示す作品でもある。読み終わるとすぐにもう一度読み返したくなる本だった。

それにしてもフランスは政治史が面白い。王侯貴族の華やかな生活や文化、美術やファッション、グルメとワインといった観光メニューそのままに並べていっても必ず歴史的事件に引き寄せられてゆく。近代の外交政策をみてもフランスの中東やアフリカに対する独自の政策は他国とは一線を画したもので、対話の裏側で暗躍する様は正に政治的かけひきのドラマだ。今回『記憶のための殺人』はアルジェリア人デモやヴィシー政権下でのナチスドイツへの協力、ユダヤ人問題を浮き彫りにしているが、現在のフランスの状況の根底にあるものを考えるきっかけを与えてくれているようだ。ヴィシー政権によってイギリスに逃れレジスタントと活動をともにしたシャルル・ド・ゴールは戦後首相に返り咲き1959年に大統領になってアルジェリア問題に対応している。そしてシャルル・ド・ゴールの名を冠した空母が現在シリアでの攻撃に参加している。

さて、本書は訳者注記とあとがきが素晴らしい。フランスの歴史に詳しくない人も訳者注記を読んだあともう一度小説を読み直すと歴史の闇の暗さをより感じることが出来るだろう。そして訳者あとがきはデナンクスへの親愛を感じられるほど彼の作品を紹介してくれている。邦訳の出ているものそうでないものがあるが、Amazonで調べて手に入れることが可能だ。少しづつ読み進めてみたい。

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テーマ : 読書記録
ジャンル : 小説・文学

コメント

Secret

No title

おお、まさかディナンクスを読まれるとは。
ノワールというより社会派といったほうがしっくりくる作者さんなので、ミステリファンにもなかなか薦めにくいのですが、確かにフランス史に興味ある方、特にダークサイドを知りたい方にはいいですね。

Re: No title

sugata様、おはようございます。デナンクスが歴史にあてる視点はフランス人には苦いところかもしれませんね。『死は誰も忘れない』も続けて読んでいます。

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