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杣人・somabito

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『傷だらけのカミーユ』

お元気ですか?

日本中の寒波や降雪、相撲界の得体のしれない呆れ話、核兵器使用を持ち出す大統領・・・。「とかくこの世は住みにくい」と言ったのは夏目漱石だが、今彼がテレビのニュースを見たらどんな苦い顔をするだろうか。

ピエール・ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を読みました。原題はSACRIFICESとあるから犠牲とか生贄という意味だ。では誰が生贄になるのか・・・。
本作は『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』に続く三作目。解説によると三部作の完結編ということだが、主人公のカミーユの存在感や周りの人たちの描き方を思うとこのまま完結とするのはどうだろうかと思う。

こんなお話。
妻イレーヌを惨殺されてから5年。パリ警視庁犯罪捜査部班長で警部のカミーユは職場に復帰し最近アンヌという恋人も出来た。ところがそのアンヌがショッピングアーケードで宝石店を襲った強盗団に偶然遭遇し瀕死の怪我を負う。カミーユはアンヌとの関係を上司に秘したまま捜査を開始するのだが、それは犯人の罠に絡まれてゆく始まりに過ぎなかった。

シリーズの前二作と『死のドレスを花婿に』が展開に緊張をもって読め面白かったのですっかり虜になっていたが、本作『傷だらけのカミーユ』が出ているのは気が付かなかった。まぁ日頃本屋さんに行かなくなったのだから仕方ないのだが、だとするとこれからの時代、読者はどのようにして新刊情報を得るのだろうか。

さて、本作の面白さはどこにあるのだろうか。カミーユが一人で捜査の糸を手繰るのは助ける事の出来なかった妻イレーヌへの思いを抱いているからというのは分かる。だから犯人を目撃した恋人アンヌを守りたいと奔走する姿は痛々しい。しかし捜査が進むうちにカミーユは自分が身動き取れない状況にはまっていることを自覚している。どこかの段階で親友の警視長グエンや部下のルイに協力を求めることが出来なかったのだろうか。出来ないのが人間の業なのだろうか。

犯罪発生から事件の解決までは三日間。その短い時間をカミーユ、アンヌ、犯人とそれぞれの視点で描かれ織りなされてゆく構成は見事な緊張感をもって進んでゆく。ところどころ真実への糸口を隠しながら進んでゆくから読者は真相を伏せられたまま読み進むしかない。いつも後手に回る読者はカミーユの動きを追いかけるしかないのだ。だから読者はカミーユが自らに課した幕にも従わざるを得ない。

カミーユの描くスケッチに関する表現や宝石強盗アフネルの姿など重たい事件の中でも感じさせるものがある小説だ。しかしアンヌの姿は痛々しい。

完結と言わず、カミーユのその後も読みたくなった。
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テーマ : 推理小説
ジャンル : 小説・文学

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