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杣人・somabito

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『浮世の画家』 カズオ・イシグロ

お元気ですか?

『浮世の画家』を読みました。カズオ・イシグロが昨年ですがノーベル文学賞を受賞したことでどんな作品があるのか知りたくなったのです。『日の名残り』『わたしを離さないで』は映画で見たのですが、文章で読みたいと思いました。ただ、カズオ・イシグロの作品は英語で書かれていますので日本語の翻訳で読むことになるのですが、その部分は少し自分に納得させなければなりません。

こんなお話です。
今は引退している老齢な画家小野は娘の結婚を控えてある思いを抱えている。戦時下にあった頃日本精神を鼓舞する画題を描くことで生きる位置を見出していたのだ。それは恩師や仲間を裏切ることにもつながっていた。過去の過ちを認めながらも時代の中で生きていくために必要な自己正当化、そのはざまで揺れる小野の心は娘の結婚を成功に導くために奔走する姿に痛々しい。街の盛衰と一人の画家の姿を重ねながら苦悩の軌跡を描く。

日本の戦時下、軍の意向に協力的な立場をとってしまい苦悩する芸術家の話はよくあります。石川達三や菊池寛、久米正雄といった作家の存在は知られていることでしょう。私の好きな井上ひさしの舞台『太鼓たたいて笛吹いて』も従軍記者となった林芙美子の生涯を描いた作品です。
ですが、『浮世の画家』はそんな芸術家の姿を問う作品ではありません。私は読み始めてすぐ作品の雰囲気に小津安二郎を感じていました。小津の映画では『晩春』や『東京物語』といった娘と親の関係を描いたものがありますが、この作品でも同様な設定と空気が感じられるのです。

物語は次女紀子の縁談に絡んで小野の心の揺らぎを明らかにしてゆきますが、その描き方は静かに行われます。小野の記憶の描き方はプルーストのようでもあります。どうやらこの記憶を使った作品の描き方はカズオ・イシグロの手法のようです。
様々な要職につき、文化人署名人と呼ばれる人になった小野ですが、時代の風潮の中で選んだ生き方に反省し悔いてもいるのですが反面自己弁護の言葉も持っています。読みながら影響力を持った文化人という存在が小野に過去の重圧として負わされている事に気が付くのです。そして小野の存在が不安定な小さな存在に思えてくるのです。

しかしカズオ・イシグロはそうゆう小野を描きながら決して彼を責めているのではありません。時代と土地に生きる一人の芸術家として、絵画という表現手段をもってしまったために時局に揺さぶられてしまった男として静かに描いているのです。そこにカズオ・イシグロという作家のヒューマニティがあるように思いました。

今回初めてカズオ・イシグロの作品を読んだのですが、少しづつ他の作品も読んでみたいと感じました。

ではまた。


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テーマ : 読書感想文
ジャンル : 小説・文学

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