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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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『償いの雪が降る』 アレン・エスケンス

お元気ですか?
久しぶりのブログです。ご無沙汰してごめんなさい。

アレン・エンキンスの『償いの雪が降る』を読みました。バリー賞ペーパーバック部門最優秀賞、レフトコースト・クライム・ローズバッド賞デビュー作部門最優秀賞、シルバー・フォルシオン賞デビュー作部門最優秀賞の三冠に輝き、エドガー賞、アンソニー賞、国際スリラー作家協会賞の各デビュー作部門で最終候補作になっている。と訳者あとがきにあるが、私にはその賞の重要度が分からないので、あぁそうなんだとしか言えない。この世界に詳しい方にお叱りを受けるかもしれないので、ごめんなさいと言っておこう。作品がデビュー作が持つ独自の力、作家の原点を内包したものであり、エージェントや出版社の政治的思惑に距離をおいていることを願おう。

この本を読んだのは冠が多かったからではない。パートナーさんが図書館で借りる時についていって、どんな本?と訊いてしまったからだ。

こんなお話
大学生のジョーは身近な年長者の伝記を書くという授業で、老人介護施設に入所している末期がんの男カールから「臨終の供述」を聞く事になる。冤罪事件だという彼は三十年前に少女への暴行殺人で有罪になっていたのだ。
カールは「臨終の供述」は真実の言葉だと言い、ジョーは隣人の女子大生とその事件を調査することになってゆく。自閉症の弟のサポート、女子大生とのロマンス、それぞれに秘めた過去、そしてカールが体験したベトナム戦争の悲劇。それらを織り交ぜながら物語は進んでゆく。現代の作品でどうしてベトナム戦争なんだろうかという思いが正直なところ浮かんでくる。もう50年前の戦争だ。
実際、物語に登場するベトナム戦争は特にベトナム戦争でなくてもいいような程度にしか関係しない。

とはいえ、物語はそこそこにテンポも良いし、それぞれの状況も上手にかみ合っていて読み手を飽きさせない。主人公ジョーのひたむきに生きようとする姿は年齢相応のかわいらしさを持っているし、隣人の女子大生も特別な存在感とまでは言えないが役どころとしては嵌っている。自閉症の弟ジェレミーの存在は何故自閉症でなければいけないのかと少し不信感を持って読んでいたのは最近この手の登場人物が多いように思うからだ。一時期、CIAの情報分析官やFBIのプロファイラーがあふれたのと同じ感じ。しかし本作では謎解きに一役買い、ジョーが兄として大人になってゆくのに必要な役割を担っている。

登場人物が出揃うと、読者には犯人捜しというお楽しみが待っている。実は「臨終の供述」のカールがやっぱり犯人だったとか、突然出てきた男が真犯人だったとかそんなルール違反は無いとして、犯人は登場人物から選んで行かなければいけないが、物語の中でも一人一人ふるいにかけられているから、ふるいの網にかからなかった者が犯人だと推測はつく。後半ではジョーと隣人のライラが犯人と思う人間が暗号を解くという手腕を発揮して浮かんでくるが、残念ながら目星がつくのが早いのでこれも違うだろう。
となると自ずと絞られるので案外真犯人は分かりやすい。そんなお楽しみも普通に楽しめる。


作者には本作に登場したルパート刑事の弟を主人公にした作品ややはり本作に出てきたサンデン教授を主人公にしたリーガル・サスペンスも書いているらしい。登場人物を他の作品にも使いながら世界を広げてゆくのは常套手段だが、機会があれば読んでもよいだろう。

ではまた。




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テーマ : 読書
ジャンル : 小説・文学

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