FC2ブログ

プロフィール

杣人・somabito

Author:杣人・somabito
Nuages・・・雲のようにふんわりとしています

カレンダー
06 | 2020/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
リンク
ブログランキング

FC2ブログランキング

人気のあれこれ!
月別アーカイブ
最近のトラックバック

『空ばかり見ていた』

お元気ですか?

先日、Book off 『つむじ風食堂の夜』吉田篤弘を手にしてから
吉田氏の他の作品を次々と注文している。

気になると色々と読んでみたくなるのは私の癖。
何冊かを読んで作家の姿をパズルのピースをはめてゆくように
自分の中で作って行くのが楽しい。

時には1冊目が気にいったので、2冊目3冊目を読んでみて失望することもあるのだが、
それは出会いの妙であるから、しかたがない。
学生の頃のように、図書館で読んでは
本屋さんで買い求めて手元に置いておくということも出来ない。

注文は簡単。
作家の名前と本のタイトルをパートナーさんに伝えると、
自分の本と合わせてネットに登録し、
入荷のメールがあると買うかどうかを聞いてくる。

ネットのリストには私が気がつかなかった本も載っているから、その便利さも良い。
パートナーさんが自分の本を注文したくなると、
私の注文を1冊混ぜてくれるのは、送料を無料にするための算段であるのだが、
いきおい、私の手元にはとり急ぎ読む予定ではない本が集まってくることになる。

日がな本を読んでいるパートナーさんと、仕事の合間にようやく読むことが出来る
私とでは、おのずと読む量も違ってくる。

『空ばかりを見ていた』はホクトさんというのっぽの床屋さんが
多くの人の髪を切りたいと旅に出るお話。
といってもホクトさんが主人公というわけではなく、

オムニバス映画のように、いくつかのお話がちりばめられている。
吉田氏のちょっと白んだ空気と、もやのかかったような質感をもつ文体の中で、
読者は彼のファンタジーを、まるでオペラグラスを覗くように体験する。


私は、床屋さんが好きだった。
子供の頃行きつけの床屋さんは、小学校の同級生の女の子の家で、
ちょっと遊び人風の色の黒いお父さんとお化粧のにおいのするお母さんが営んでいた。

「お願いします。」って言って椅子に座ると、ちょっと澄まして背筋を伸ばすのだが、
いつしか温かいタオルの中で、寝息をたててしまう。
床屋は、椅子の中ですっかり身を任せてされるがままになっているのを楽しむのが良い。


同級生の床屋さんには知り合いの従業員がいた。
聾唖のその女性は私がお店に行くと、いつもニコニコと嬉しそうに話かけてくれる。

私の母は若いころ聾唖学校に勤めていた。
当時、寄宿の生徒も多く宿直の折などには、よくお芝居の話や町で観て来た映画の話を
せがまれて生徒たちにしていたそうだ。
「先生、お話して」っておねだりする子供たちに囲まれる母。
そんな子供たちの一人が、大きくなって床屋さんに勤め、息子の私にかみそりをあてている。
お互い、こそばゆいような楽しさがあった。

床屋さんの椅子に座っていて苦手なのは、話しかけられることだ。
せっかく心地よく身を任せているのだが、時に世間話をむけてくるのがいる。
さして注文の無い私は、黙って座り、はい出来ましたと小気味よく店を出たい。

彼女は口数が少ないから、私も楽だった。

ところが、あるとき目をつぶっていた私の肩をたたき、しきりに「ごめんね」って言っている。
寝ぼけながらなにを謝っているのかよくわからないまま店を出たが、
家に着いて鏡をみると、どうもまゆ毛の長さが左右でちょっと違うようだ。

ははぁ、これのことかと母と笑った。

吉田篤弘の『空ばかり見ていた』を読みながら、
子供の頃の床屋さんを思い出して、しばし記憶に遊んだ。
これも、彼のファンタジーのもつ魔法のせいなのだろうか。


空ばかり見ていた (文春文庫)空ばかり見ていた (文春文庫)
(2009/01/09)
吉田 篤弘

商品詳細を見る



追記)

吉田篤弘氏のことをネットで調べていたら映画の『つむじ風食堂の夜』
函館を舞台にして撮影されたと言う事がわかった。
改めてYouTubeで予告編を見てみると、なんと懐かしい店。
函館山の麓、母の実家のあった坂の下。電車道路に面した古い食堂。

透明なスープにおふがのった素朴なラーメンが美味しいお店。
おばあちゃんは元気だろうか。
今日は気持ちのいい風が吹きそうだ。
スポンサーサイト



テーマ : 本に関すること
ジャンル : 本・雑誌

コメント

Secret

杣人のNuages

ブログ内検索
 RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ホテル探しに!
クリックをお願いします!
Google