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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
Nuages・・・雲のようにふんわりとしています

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高城高を読む

お元気ですか?

当地、雲が張り巡らし姿の見えない戦闘機の爆音だけが響いています。
週末に向けて雨が近づいているのでしょう。

高城高氏を読んでいます。
先に、『ウラジオストクから来た女 函館水上警察』を読んでいますが、同時に創元推理文庫の高城高全集を求め、すこしづつ読んでいるのです。
解説によると高城高氏は「大藪春彦、河野典生と並び、三羽烏と呼ばれた日本のハードボイルド小説の嚆矢」(全集2西上心太)だそうですが、大藪春彦は角川映画で『野獣死すべし』を見た限りですし、河野典性は名前も知らないのですから、推理小説やハードボイルドの世界に馴染んでいる読者諸氏が解説を読んで感心を深くするような事は私に限っては得ようもないのです。ハードボイルドの特徴も作家や作品の系譜も不案内ですから、そう云う楽しみは何方かにお任せして私は高城高氏の作品に直接体当たりしてみるばかりですが、幸いに高城氏は函館の出身。『ウラジオストクから来た女 函館水上警察』では明治時代の函館の街を思い浮かべながら読むことが出来ました。
同様に、文庫全集1に収められている『墓標なき墓場』は昭和33年の海難事故をめぐり左遷された新聞記者の主人公が真相を探る話ですが、私の頭の中には潮風に湿った釧路や花咲漁港の様子が、ぬかるんだ道を行き来するトラックや人々の喧騒となって再現されていきます。
こうゆう楽しみは少しでもその土地や時代を知るものにとっては嬉しいもので、ちょっとしたノスタルジーと相俟って心の中でくすぐったい気持ちよさを与えてくれます。

でも、読み手の経験に依拠した評価だけでは高城氏に対して失礼です。体当たりと言ったのですから、きちんと読まなければいけません。全集1の『墓標なき墓場』は高城氏唯一の長編作品ということですが、それでも文庫本で200頁ほど。全集2『凍った太陽』からは短編ばかりで、高城氏が短編の名手だとすぐ分かります。短く余分なものを丁寧にそぎ落とした、または吟醸酒の米を磨いたような文章が並び、しかもそれぞれがきちんと配置されているためリズムもしくは呼吸が乱れるということがありません。殆どの作品が昭和30年代に書かれた高城氏の作品は同時代の空気を硬質に描き出しています。
『われらの時代に』で高城氏は「ハードボイルドの文体はスポーツで言えばボクシングにたとえられる。つまりスピードとリズムと無駄のないフォームの力強さ、美しさである。我々はまず言葉をえらばなければならない。・・・・言葉の一つ一つが読者に肉体的な打撃を与える迫力を持っていることだ。」まさに言葉通りの挑戦を高城氏は作品で行なっているようです。作品にハードボイルドの世界を描くということは高城氏にあってはハードボイルドな作家であるということなのでしょう。

では、ハードボイルドな作家、ハードボイルドな生き方とはどうゆうものをいうのでしょうか。高城氏は「ハードボイルドについて語るならヘミングウェイを無視することは出来ない。」と言い、第一次世界大戦に参加し、現実を前にして飾られた言葉の虚偽を知った作家は、国に帰ってもさらに因習や宗教の偽善を目の当たりにし、感情の欠如、思考の拒否にいたります。しかし、私達は複雑な現実の前に混乱して立ち止まったり、思考を拒否している事はできません。
高城氏は「ハードボイルドという生き方はもともと、機械文明あるいはもっと大きな意味の現代のメカニズムに対する一種の反抗であったはずだ。巨大なこの歯車に失われてゆく人間性を奪いかえそうとして倒れる姿はそれなりに尊い。」と認めながらも、「ヘミングウェイの描いた殺し屋は道具となった人間としてなにか象徴的な意味を帯びてくる」と、思考の拒否が私達を歯車の一部に巻き込んでゆくことを警戒します。

私たちはハードボイルドな生き方を選択せざるを得ない状況に時として投げ出されます。
そして、ますます複雑さを増す社会の中で一人のたうち回りながら進まなければならない事になります。
「どうしてこんな事やっているんだ。」と独り言ちしながら、自分では分かっているのです。
「俺が決めたんだ。俺はやらなくてはならないんだ。」と。

ドライマティーニを飲んで、ふっと一息ついたら戦闘開始です。
貴方のトレンチコートに高城高氏の文庫を一冊忍ばせて。

高城高全集〈2〉凍った太陽 (創元推理文庫)高城高全集〈2〉凍った太陽 (創元推理文庫)
(2008/05/29)
高城 高

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テーマ : 推理小説
ジャンル : 小説・文学

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