プロフィール

杣人・somabito

Author:杣人・somabito
Nuages・・・雲のようにふんわりとしています

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
リンク
ブログランキング

FC2ブログランキング

人気のあれこれ!
月別アーカイブ
最近のトラックバック

『追込』

お元気ですか?

ディック・フランシスの『追込』を読みました。原題は In the Frame 主人公は画家のチャールズ・トッド。
彼が強盗に家財を根こそぎ奪われ若い妻を殺されて呆然としている従兄弟をたまたま訪ねるところから物語はスタートします。ワイン商でオーストラリアからワインを買い付けて帰ってきたばかりの従兄弟。妻を失い生きる生気をも失ってしまっている従兄弟をなんとかしなくてはと願うトッドは競馬場で裕福な未亡人のメイジイと知り合い、彼女もまたオーストラリアから帰国したばかりに家を火災で焼失するという不幸にみまわれたことを知ります。従兄弟との共通点に疑念をいだきオーストラリアに調査に飛ぶトッド。冒険の始りです。

主人公がイギリス以外の国に赴くのは6作目の『血統』でアメリカがありましたが、今回はオーストラリアです。読者にはオーストラリアの風景をサービスするとともに、イギリスとは違った競馬事情を紹介する新鮮さがあります。シドニー上空からオペラハウスを見、キャンベラを経由してメルボルンカップを観戦しに出かけます。アデレード、パース、もちろんアリス・スプリングスのエアーズ・ロックも。観光案内書ではありませんが、せっかくのオーストラリアを移動しながら事件の真相にせまるトッド。

さて、今回の事件の鍵となるのはトッドの従兄弟と知り合った未亡人が共に買っていたマニングスの馬の絵です。アルフレッド・マニングスは1878年に生まれたイギリスの画家で、田園風景や狩りや競争をする馬の絵が有名です。画家の名前を覺えていなくても絵は何処かで見覚えがあるかも知れませんね。そのマニングスの絵を旅先のオーストラリアで買った二人がともに事件に巻き込まれています。美術館で言葉巧みに画廊を紹介され絵を買わせられます。
一時期日本でも繁華街の空き店舗を使ってリトグラフを展示し綺麗なお姉さんが客引きをして絵を買わせる風景が見られましたね。それこそ蜘蛛が網をはって獲物を待ち構えているようで側を通るだけでも気持ちが悪かったものですが、デフレが続く現在、ああゆう商売はどうなったんでしょう。

旅先で気持ちが開放的になっている時、口うまく絵を勧められれば買うものなのでしょうか?まぁ、よほど確りした画廊で出自が分かる作品だったり、気に入った画家や作品なら買わないこともないでしょうが、旅先です。持ち帰る(送ってもらうにしろ)リスク、保険、税金?なんか考えると小市民の私はきっと買えないでしょうね。

面白かったのは、そのマニングスの絵が偽物ではないかと疑い画廊に忍び込むところ。贋作をかいていると思しき絵を盗み筆遣いを確認します。画家には固有の筆遣いがあり小さな部分を見ても本物かそうでないかが分かると言います。音楽でもそうですね。ほんの数小節楽譜を見ただけで誰の曲か分かります。小説はどうなんでしょう?

もう一つはトッドの仕事。彼は馬の絵を得意とする画家です。馬主などに依頼されて書いたり人気のある馬を書いてはファンに買ってもらいます。あまり勝ちの強い有名馬は他の画家も描いているから供給過多でいけないのだそうです。画家の世界も大変です。
ところで、競馬の世界は馬の絵が好きですね。私の知っている馬主さんはビジネスホテルを経営していましたが、ロビーに馬の絵がかかっていました。ある食品会社の社長さんとお会いした時、社長室に馬の絵がかかっていて、“ははぁ馬主さんなんだな”と思ったものです。漁師さんが自分の船の大漁旗の写真を家に飾るのにも似ていると思います。愛着のある自分の馬がレースに出て稼いでくれる。可愛いのでしょうね。

パートナーさんの知り合いで共同馬主になっている女性がいました。競馬馬が好きで株を買うような形で馬主になるのだそうですが、牧場に行って馬と一緒に写真を撮ったりという楽しみもあります。都会ぐらしの人にはちょっとした楽しみかも知れませんね。

そういえば、私の両親の家にも馬の絵が居間に掛かっています。マニングスのような競馬馬の走る絵ではなく、ちょっと幻想的な感じの草を食む馬の絵です。知り合いの画家が書いたものを母が買い求めたのですがなかなか良い絵です。

生命や躍動を感じさせる馬は、絵を飾っておくとなにかいい事でもあるのでしょうか?
そんな事を考えているとなんだか私も馬の絵が欲しくなってきました。有名作家の絵は買えませんが、美術館に出かけて馬の絵を眺めてみましょうか?見知らぬ美女に声をかけられるのをちょっと警戒しながら・・・。


oikomi_convert_20120913080946.jpg


おまけ)

原題の In the Frame は絵を題材にしたミステリーという事が伝わる良いタイトルだと思いますが、何か含まれた意味があるのでしょうか?私には分かりません。でも、邦題の「追込」というのもなかなかのタイトルだと思います。トッドが犯人を探し出し彼らの悪事を少しづつ明らかにしてゆく感じがします。
さらに、競馬で追込といえば、最後の直線で先頭を行く馬を追撃してゆくことですが、この追込をする馬には特徴があります。まず当たり前ですが先頭を抜けて走る独走タイプの馬ではありません。スタートは遅く、中盤では集団の中ちょっと外れた位置にいます。これは微妙なところで集団にいますが、周りの馬と一緒に走るのが本当は苦手な馬なのです。走っていると周りを煩わしく思っています。我慢して走ってきて最終コーナーを周り前が開けた時に我慢の糸が切れてスパートをかけるのです。ちょうどその時に先頭を走る馬がいるので目標にして追い込む?
そこは騎手との気合の合わせ方なのでしょうが、もしかしたら先頭馬を抜いて一着になることが本旨ではなく、集団から抜けて開放感で喜んで駆け出したくなっているのかもしれません。

トッドは美術学校を出て不動産の仕事につきますが、それを辞めてフリーの画家になっています。オーストラリアでトッドに協力する画家の友人もやはり破天荒な生活に身を染めています。どうやら邦題を決めた人訳者の菊池光さんか編集部か知りませんが、そんな追込馬の性質も主人公に重ねて邦題を決めたのかも知れません。なかなか心憎い事をしているなと感心してしまいます。
スポンサーサイト

テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

コメント

Secret

杣人のNuages

ブログ内検索
 RSSフィード
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

FC2カウンター
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ホテル探しに!
クリックをお願いします!
Google