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杣人・somabito

Author:杣人・somabito
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ディック2冊

お元気ですか?

困った時のディックい・フランシス。次何を読もうかと迷う時、重たくなく軽すぎずとディック・フランシスは重宝です。安心して読み始める事ができます。

でも、『密輸』はちょっと違いました。最初から登場人物が勢ぞろいするので、なんだかアガサ・クリスティを読み始めたような感じです。物語に入り込むのにちょっと手間取りました。

ストーリーは馬の運搬を専門にする会社を経営するフレディが主人公。ある日運転手が禁じられているヒッチハイカーを乗せて帰りそのハイカーが馬運車の中で死亡したことから事件が始まります。今回のテーマは流感。そしてコンピューターウイルスです。1992年の作品としては目の付け所がいいですし、作品の中で語られるコンピューターウイルスやバックアップなど咀嚼してよく書けています。

そしてもう1冊。『証拠』は気合を入れて読み始めます。なんて言ったって主人公はワイン商のトニイ。カバーに書かれた紹介文は「サンテミリオン、マコン…私は慎重に味見をしては吐き出した。どれも同じワインだ。」とあります。偽酒がテーマのお話です。そして解説は弁護士の山本博先生。山本先生はワインの専門家でもあり著書も多くあります。私が初めて買ったワインの本も山本先生の本でした。ちなみに私はある会合で山本先生にお目にかかったことがあるのですが、とても恐れ多くてワインの話なんかできませんでしたね。

ストーリーはワイン商のトニイ・ビーチが調教師ジャック・ホーソンのところで開かれたパーティーに酒を納品するところからはじまります。そこでトニイは馬主の一人が経営するレストランでラベルと中身の違う酒が売られていることを相談されます。疑惑の酒はラフロイグ。イソジンのような強烈な香りをもつラフロイグを偽物とすり替えるなんてちょっと大胆な気もします。でも、作品のインパクトとしては充分でしょう。
このパーティーは作品の主題となる事件と登場人物を引き合わせるところですが、ディック・フランシスの作品はこうした導入がとても上手く読者を引き込む力をもっています。
トニーは刑事のジョン・リジー、パーティーで知り合った私立探偵のジェラード・マクレガーとそれぞれ個別に協力関係を持ち偽酒事件の調査に乗り出していきます。

この作品で秀逸なのはなんと言ってもお酒の扱い方でしょう。多くの探偵小説でお酒は登場人物の人物像を描く小道具として登場します。どんな酒を何処で飲むのか、女性との軽い探りあいには?でも、ディック・フランシスの『証拠』ではお酒そのものが重要です。ピュア・モルトのウイスキーとグレン・ウイスキーの違い。ブレンドされたウイスキとは・・・。ワインの作り方は?
『密輸』で馬を発熱疲労させるウイルスとコンピューターウイルスを詳しく描きながら作品に仕上げたように、『証拠』では輸送、瓶詰めといった流通経路の中に犯罪の入り込む余地のあることを作品にしています。
読者はベルズのように見覚えのあるスコッチウイスキーを作品の中で楽しむと同時に、ボルドーのネゴシアンやワインシッパーといった未知の世界を垣間見ます。山本先生も解説で書かれていますが、100年戦争を持ち出すまでもなく、イギリスはフランスの特にボルドーの地域とは深い関わりがあります。産地から樽で送られたワインをイギリスで瓶詰めする歴史は瓶詰めされたワインを輸入する日本とは流通事情が違います。そんな好奇心をそそるお酒事情を織り込みながら物語は進んでゆきます。

さて、私にとって『証拠』はお酒以外にも思わず懐かしさを感じさせる場面がありました。いよいよ確信に迫ったワイン商のトニイは競馬場の施設にある仕出し料理を出す会社の倉庫に行きますが、そこで犯人一味に怪しまれたトニイはスタジアムの中を身を隠しながら逃げ道を探します。
これって、競馬場のスタジアムを走り回って鬼ごっこやかくれんぼをした私にはものすご~くわかっちゃうシーンです。子供の頃、函館競馬場は今のように警備も厳重ではありませんでした。そんな時代です。スタンドの上の方にはVIPルームというほどではありませんがコンクリートの壁で仕切られたところがあります。かくれんぼが出来るちょうどいい場所です。階段状のスタンドを縦横に駆け回り、手すりは鉄棒代わりになりました。馬がコースに出るところはちょっとしたトンネル気分ですし、掃除された後の馬券売り場に何かを探すのは宝物探しの趣があります。そして入場ゲートの鉄柵。場内からこの鉄柵越しに外を見ると、まるでスパイ映画の主人公のように追い詰められた緊迫感を想像することが出来るのです。競馬場は子供サスペンスの舞台でした。
悪党一味から姿を隠し逃げまわるトニイと一緒に思わず何処へ逃げるの?とハラハラします。

そしてもう一場面。私立探偵と一緒に瓶詰め会社に侵入したトニイ。探偵のジェラードは悪党に捕まりそれを隠れながら見ているトニイ。ステンレスのワインタンクに隠れながら恐怖に身をすくむトニイに私は「バルブを開けるんだ」と心の中で声をあげます。

私のお酒好き、競馬場で遊び育ったという個人的事情もおおいに関係していていますが、そうでなくても楽しめる素晴らしい作品です。

さてお楽しみを一つ。悪党一味の瓶詰め工場に潜入したトニイはワインの偽ラベルを見つけて言います。
「あれはシャトー・ドゥ・シュノンソーだ」「このサンテステフのラベルの絵ですよ。どこかで見た、と思っていたのです。これはロワールのシャトー・ドゥ・シャノンソーで橋が入ってないだけだ」

いかがです?フランスの観光地としても有名なシャノンソーの城。行かれた事のある人も多いと思います。ボルドー上流に位置するサンテステフとは随分離れていますね。偽酒をブレンドし偽のラベルを印刷して張るなんてなんでもありの大悪党です。こんなセリフを頼りにネットでシャノンソーの位置やお城の形を確かめボルドーのサンテステフを地図で確認して悪党の所業を知るのも現代ならではの楽しみではないでしょうか?

ちなみにサンテステフのワインで私のお薦めは、コス・デストゥルネル やカロン・セギュール。モンローズも良いですね。こうゆう良いワインを飲む時は本を置いてゆっくり味わいましょう。



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テーマ : ミステリ
ジャンル : 小説・文学

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